春海の細く長く、白い指先が一臣の色あせたジーパンのホックにかかる。
指先で金具を引っかいて、上目遣いに一臣を見て、首を傾げる。
見逃してしまいそうな合図に気付いたのは、春海を自分のものにして半年ほど経ってからだったと思う。
始終リードをとってしまいがちの一臣の体の下で、こっそりと不満を溜め込んでいたらしい。
「拒んでたくせに、ずいぶんと積極的だな」
強請って甘えてやっと竜宮城に連れ込んだプロセスの面倒さを思い出し、少し意地悪を言ってみる。すると伸ばされていた指が引っ込んだ。
「じゃあ、……しない」
ふいっと横を向く顎を掴んで正面を向かせ、噛み付くように口付けながら、
「ごめん」
謝罪の言葉を口移しで伝えた。重ねたままの口唇がふっと綻んだから、それを許してもらえたと受け取っていそいそと身を起こす。壁に背を預けた一臣の足の間に、春海が四つん這いで近付いてきた。
ペタリと座り込みながら、一臣のジーパンのホックを外す。
おずおずと遠慮しながらも先へと進む指先を動かす動機を思って、一臣は頬を緩めた。
まだ大人しい自分の性器に春海の手が触れ、ゆるゆると愛撫を施される。
直接的な刺激に満足しながら、春海の乱れてはいるがまだボタンがかかっているシャツに手をかけ、露わにした白くなだらかな肩のラインを辿ると、くすぐったさに身を捩る。
竦める首筋に顔を押し付けるようにして、喉仏を甘く噛む。耳の裏に音をたてて吸い付きながら、柔らかな髪の毛をわしゃわしゃとかき乱す。ぶるりと震えて逃げかけるのを引き戻して、掬い上げるように口唇を奪う。軽く吸い付いては離れる動作に小さな音が立つ。
「……は、ぁ……んっ……」
わざと不規則なタイミングで呼吸をずらし、息苦しさに喘がせてその声を楽しむ。
高すぎず、低すぎず。耳にするりと入り込んで、一臣の中に甘やかな気持ちの風紋を作って響く声だ。
息苦しさに耐えかねた春海が身を引いて、潤んだ視線で一臣の満足げな双眸から下へと辿る。
鳴ったのはどちらの喉か。
春海の栗色の髪の毛が重力に従うように流れ落ち、腿に毛先が触れる。くすぐったいとそれを梳きながら耳にかけてやり、次に訪れる感触に神経を集中させた。
熱く濡れたものに自分の欲望が包まれる。
あの清楚な印象を与える小さな口にと思い、また熱が高まる。
見世物の愛撫ならばそこで挑発的に自分を見上げてくるのだろうが、羞恥に身を染める春海にそんな真似はできず、ただ一心に口淫が続く。
素直に身を任せていると、下肢から粘度をもった水音が生まれ始めた。肌を通して得る感触だけでなく、見えるもの聴こえるものにも煽られる。
「……かわいいな、お前は」
零れ落ちる髪の毛を梳いて囁いた言葉に、春海の体がぴくりと跳ねた。
言葉だけではなく一臣の体がそう訴えているのを、春海は感じている。
それでも敢えて言葉にして追詰めてしまう、自分の性質の悪さを自覚しないでもない。
意地の悪い言動に仕返ししようとでも言うように、春海の動きが大胆になってくる。同じ性を持つからこそわかる。男の性を的確に登り詰めさせようとする刺激に逆らわず、一臣は息を乱し、深く沈みこんだ春海の頭を押さえつけようとする衝動を孕んだ手でたゆんだシーツを握り締めた。
白く染まった思考が落ち着き始めた頃、そろりと春海が頭を上げる。けれど視線は逸れたまま、口に含みきれなかった白濁を恥ずかしそうに慌てて拭う。そうしながら座り込んだまま、自分の足をもぞりと動かす。
「あー、限界」
伸びた手が、春海の腰を抱き横たえ、口付けて舌を絡め、驚いて閉じかけた下肢を割る。
主導権を取り戻した一臣の水を得た魚のような動きに呆れた春海の手が、まるで受け入れるように背中に伸びた。それは溜息に似た動作。
そして深爪するほど清潔に整えられた短い短い爪の先をせめてもの武器に、焼けた広い背中に痕をつけようと試みるのだ。
2011/5/6
連休だから更新してみましたウィークのエロ更新。
春海はMなので、ご奉仕好きと言う裏設定〜。でも一臣はしたがりなのでもどかしい。