微エロでお題 2

01.絡めた指の先
02.ハジメテ
03.濡れた瞳
04.懇願
05.滑るつま先

■お借りしたのはコチラ……COUNT TEN.


「絡めた指の先」( 1/5)

 指を絡めると、英介の手が自分の手よりも小さいことを認識する。
 手を打ち合わせ力強い握手を交わすロッカールームで、同じことを思ったことはない。
 打ち合わせると熱と痛みを伝えてくるそこは、活力と勇気を与えてくれる。
 指を絡める時、それは健気さを伝えてくる。
 指先だけを見て可愛いなと思って、顔の筋肉が緩む。
 英介は何を考えているのか、背中を向けた体勢で高山の右手を抱え込むようにして指を絡めている。
 愛撫とも違う気がするのは、英介がまるで動物でも観察するかのような熱心さで高山の手を弄っているからだ。
 面白いが、正直くすぐったくてたまらない。
 まだ正気がもどらないのだろうか。
 さきほどまで共有していた熱を思い出して首を捻る。
 明日のオフはだらだら過ごそうと決めて挑んだシーツの海で、軽く一泳ぎ。
 風邪をひかないようにと汗を拭って、眠りに引き摺りこまれるのを待っていた。
 そうしたら英介がもぞもぞと高山の手を弄り始めたのだ。
 あどけない仕草で指の股を撫でた。
 その微妙な触れ方に息を詰めなくてはならなくなった。
 そろそろ手を引こうと思ったところで、英介は更にとんでもない行動に出る。
 包んでいた手を舐めた。
 人差し指を口に入れている。
「……英介」
 どうしたいのだと問えば有耶無耶にされそうで、かと言ってこのまま気持ちの赴くままに行動しても蹴飛ばされそうでただ名前だけを呼んだ。
 熱く柔らかい舌を指先に感じる。
「……、ど、うした?」
 たまらず聞くと、ごろりと振り返って至近距離で甘い視線を向けてくる。
 思わず喉が鳴る。
 英介は高山の手をとったままで、ほんの少しのぞかせた赤い舌が爪を舐めた。
 それを凝視していると、英介がふっと可笑しそうに笑った。
「めっちゃ見てる」
「そりゃ、見るだろ」
「こういうは女の子がやるからエロいんじゃないの?」
「十分エロい。なに? 誘ってたのか?」
「誘ってはないけど、どういう反応するのかなと思って」
「なんだよそれ。知らねぇからな」
 もう一度覆いかぶさると、英介は嫌がりもせずに楽しそうに見上げてきた。
 絡めた指をベッドに縫い付ける。
 繋がれた指先に視線をやった英介が微笑む。
「そういう顔が、俺を喜ばせるんだけど」
 高山の切実な言葉に、英介は首を傾げる返事をしてみせる。
 まぁ、いいか。
 指を絡めるだけで幸せになれる自分達の幸福は地球の温度を適度に保ち、人間に住みやすい環境を与える力になっているのではないかと思えた。
 そんなことを思えば、シーツを湿らす夜の罪悪感もたちまちに消えていくのだ。

あとがき>誘い受け!


「ハジメテ」(2/5)

 上気していた頬がすっと青ざめたように見えた。
「ちょ、待ってよ」
 うつ伏せにしたばかりの英介が体を捻る。
 見上げてきた目には困惑。
「ど、どうすんの? なにすんの?」
 夜のベッドの上。
 裸で弄りあって、どうするもなにもない。
 何が彼をうろたえさせているのか、高山には検討がつかず質問の意図を掴んでやれない。
 英介は言葉が通じなかったことに絶望を覚えたかのように顔を強張らせ、熱を帯びていたはずの肌を冷ましていく。
「英介?」
「や、だって、だって。いつもと、違う」
「ちがう?」
「……むきが違う」
 むき、という単語を変換するのに手間取っている間にも、英介はどんどんと理性を取り戻していく。
 “向き”か、と思い当たった顔に、英介が少しだけ安堵をのぞかせた。
 そう言えば今までは互いの顔が見える抱き合い方しかしていなかった。
 普段は見せない不安を隠そうともせずに晒して、英介は高山の表情や指先の温度に集中している。
「怖い?」
 頬や耳朶をマッサージするように撫でると、英介は長い睫毛がパサパサ触れあう音をたてて瞬きをして答えを探す。
 結局は曖昧に首を傾げたのだけど。
「こうする方が、負担は少ないと思うんだけど」
「……はずかしい」
 目を伏せた顔は本当に恥ずかしげで、無垢な少女めいた趣がある。
「なら、いつも通りにしようか」
 しおらしい態度に、いつもより甘い声が出て譲歩を提案する。
 英介は暫く考えてから、首を横に振った。
「いいよ。やってみる」
 見せてくれたのはチャレンジ精神。
 英介らしさが身に沁みて、高山の手つきはより甘さを増す。
 英介が初体験に戸惑う姿、それでも踏み出してみると差し出した勇気。
 表情も姿も心も、高山をどこまでも舞い上がらせる。
 胸に注がれる糖分こそ、高山にとっての初めての味。

あとがき>後背位はいつかじっくり書きたい、という野望。


「濡れた瞳」(3/5)

 目力、と言うのはメイクでどうとでもなるものらしい。
 黒く縁取られた目に有り得ないボリュームと長さを演出した睫毛があれば、女の子は人形めいた可愛らしさを手にできる。
 つまりのところ、男は人形がいいということだろうか。
 食堂でテレビを見ていたら、今人気のモデルが登場した。
 あの娘めちゃくちゃ可愛い。
 昴が喜ぶのを聞いて、高山はそんなことを思っていた。
「でもあのメイクってエッチの時に気ぃ使うんだよね」
 続いた言葉には幻滅したが。
 それから自室に引き上げると英介も自然と付いてきて、DVDを漁っている。
 その目元につい視線がいく。
 睫毛は長いけれど、あのモデルの子ほどでは勿論ない。
 白目に濁りもなく、黒目が大きい。
 いつも潤んで喜怒哀楽を色濃く反映する瞳は、改めて眺めると驚くほど綺麗だ。
 サッカーをする時の少年らしさとプロの誇りを秘めた眼差しは神聖で、ずっときつい。
 何に対して怒っているのかと思うほど鋭い目つきを見せる。
 怒っているわけでも睨んでいるわけでもない。
 対峙する相手か自分達か、そのどちらかが必ず手に入れるであろう勝利を見据えているのだ。
 それは狩りに挑む肉食獣の眼差しに似ている。
 その飢えに僅かな幸福すらちらつかせてじわりと濡れる。
 少年のひたむきさも、狡猾な男の不敵さも、そのどちらもが見える目。
 だがこうしてリラックスした時にはただただ愛らしい。
 英介はいつも何かを見つめている。
「……なに?」
 じっと見ていると、さすがに居心地が悪かったらしい。
 英介が困惑顔で問いかけてくる。
「いや、目がでかいなと思って、見てた」
 眉間に皺を寄せ、英介はベッドに上がってきた。
 じっと高山の目を覗き込んでくる。
「タカのはなんだろうね。細いわけじゃないんだけど」
「怖い、とはよく言われる」
「怖くは無いけど、鋭いって言うのかな。あと何考えてるのかわかりにくい」
 言いながら接近してきた英介の目が閉じられる。
 目じりもらった柔らかい感触のお返しに、高山も同じ位置へ口唇を寄せた。
 開いた目に自分が映る。
 この距離で見つめ合えることの意味を噛み締める。
 いつも瑞々しく光湛えるその目を、もっと濡らしてみたいと思った。
 思ったままに手を伸ばす。
 その手を受け入れながら、英介は今ならお前の考えていることがわかると言った。
「俺のことが欲しいと思っている」
 好戦的に、魅惑的に大きな目を眇める。
「お前は何でもお見通しだ」
 俺の手でなくとも濡れる瞳にならば、この胸の内の醜い感情を見抜かれても構わない。

あとがき>これでも初心な受け。


「懇願」(4/5)

 食い貯め、寝貯め、ヤリ貯め。
 それらができればなんと便利な世の中になるだろう。
 朝も夜も来ないコンビエンスストアよりも、手元のネズミちゃんワンクリックで翌日にはお手元に届く諸々の商品よりも、仕事ができて家事もできちゃう旦那よりも、きっと便利だ。
 辛いことがあると立ち向かうのが江口英介の良いところ。
 なのに現実逃避に、ついどうでもいい思考を巡らせるこの事態はどういうことか。
「もうやだ。つらい。こわい。いたいっ」
「もーちょっと。な、もうちょっとだけ」
「んんっ、それ、三分前にも同じこと言った!」
「三分前じゃなくて三回前かな」
「さいあく。もう無理」
 久々にしようかと、盛り上がってわざわざホテルにまで赴きベッドに飛び込んだまではいい。
 ここ数ヶ月は仕事が多忙で息つく暇さえなく、溢れっぱなしのアドレナリンは全てサッカーのために使用されて、気付けばこの一ヶ月はキス一つしていない。
 そんな状態からのベッドインは危険行為だった。
 厳重な金庫に仕舞い込んでいた性欲は、取り出してみたら随分な利子で膨れ上がっていたらしい。
 繋がったままどれくらいの時間が経ったのか。
 揺すられていないのに体が上下に揺れている感覚がずっと残っている。
 今日の高山は恐ろしく強引だった。
 好き勝手に体位を変えて穿つくせに、登り詰めるタイミングだけは合わせてくる。
 英介だって男だ。
 どんなに仕事で精魂使い果たそうとも、一度人肌を覚えた体が疼く夜だってある。
 それを抑え込んで抑え込んで過ごした日々。
 確かに燃えた。
 燃えてはいたが、限度がある。
「うー、もー、無理! もう出ないし! 腰、溶けてる」
「あー、いい声」
「明日は無理でも明後日ぶっ殺してやる」
「あぁ、興奮するね」
 この強気と強引さと自信を、どうかお願いだからピッチの上で見せてくれ。
 声にする前に口を塞がれた。
「気持ちよくないか?」
「もう良すぎて駄目。死ぬ。ほんと死んじゃう!」
「あー、今のは逆効果。本気で興奮した」
「うっそ! ほんとに興奮してるし、馬鹿じゃねぇの、お前はー!」
「大声出すと締まるんだな」
「うー、もー、やだー。こわい。本当に怖い。タカが怖いよぅ」
「んー、怖くない怖くない」
 甘ったるい声が頬の滴を拭いながら発せられる。
 高山が楽しそうなのは、英介が本気で拒んでいないからだ。
 嫌がっているようで本当は高山が執拗に攻めたててくることを悦んでいる英介を、愛しいと腹の底から思えるからだ。
 熱をもった腕が高山の首に絡む。
 お願い、と耳に囁かれる。
「優しくしてよ」
 優しくさせてよ。

あとがき>死んじゃう、っていうのが書きたかったんだ。


「滑るつま先」(5/5)

「タカの腹筋が欲しい」
「……俺はもうお前に色気を求めるのをやめようと思う」
「人に突っ込んだ状態でよくそんなことが言えるな」
「突っ込まれた状態でよくそんなことが言えるな」
 腰を抱いた腕をちょっと上下させると、減らず口からは甘ったるい喘ぎ声が零れだす。
 動きを緩めてキスをすると英介は乱れた息を整える。
 落ち着いた視線は、下腹部に向けられた。
 その視線が淫らに繋がる部分ではなく、高山の腹筋に向くのはどうしたものか。
 そのプロ根性はいっそ犬に食わせておけ。
 口にしたら、別れるどころか殺されるかもしれないので黙っておく。
 潜り込んだ英介の内部は熱くてきゅっと高山を握りこむような刺激を与えてくれて萎える暇などないが、今この場にふさわしい言葉はもっと他にありそうな気もする。
 溜め息をついてベッドに仰向けに転がると、英介は投げやりな態度に口唇を尖らせながら、やはり高山の硬い腹部に触れる。
 ぐっと力を入れて突き上げれば手の平でその筋肉の動きを察し、次には体全体で高山の不意の動きを受け止めて甘く啼いた。
 荒い息を抑えようとする英介の腹部に触れる。
 熱を持った肌の感触を確かめるが、しなやかに収縮するゴムを思わせる弾力は高性能の証ではなかろうか。
 何が不満なのだと問おうとしたが、手の平が答えに触れる。
 そうだそうだ、英介は腰周りがスポーツ選手にしては細いのだ。
 ここぞの踏ん張りが利かず、ゴール前で訪れた絶好のチャンスをディフェンダーとの競り合いで奪われてしまうことを彼はとても気にしている。
 筋肉のつきというよりは、骨格の問題だ。
 ひょっとしたら神様は、江口英介を女の子として作りかけていたのではないかと思ってしまうような腰を撫でる。
 英介はふっと息を詰めて、焦れたように不器用な上下運動を繰り返す。
 細い腰だと思う場所に、自分は何を入れているのだと思わないこともない。
 だけど上に乗っかった相手が気持ちいいとうっかり零しているのだからいいかとも思う。
 腹に力を込めて上半身を起こす。
 体勢が変わってひっくり返りそうになっている英介を支えて、長い足を投げ出すように座らせた。
 自然と深くなる結合に、英介が身悶えるのを腕で拘束する。
 反らした喉や耳元の皮膚を緩く噛むと、ずぶずぶと高山に溺れる。
 もどかしそうにシーツの上を滑るつま先。
 英介を膝に乗せて突き上げる腹筋にすら、英介は劣等感を感じているだろうか。
 だとしたら、情事の最中に高山の胴を締め付ける太腿が与えてくる圧力の強さを高山が苦く感じていることを教えてやりたい。
 それも喘いで濡れて溺れ始めた心からは追い払われて、体格であるとか脚力であるとかそんな些細なものも全部ひっくるめて君を欲しいと願うように思うだけ。

あとがき>思えばBSシリーズはマッチョBL。


更新日 2007/12/3

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