言ノ端七題_ver2【G】
1:はやく、はやく



 一つだけ言っておく。


 俺は今、昴さんのミドルがポストに当たって弾かれたところでも狙ってやろうかと相手ゴール前に詰めていた。
 そんで、やっぱり昴さんの足技は不発に終わってポストに直撃した。
 直撃したボールはふんわりと弧を描いて弾かれて、それを追った俺は清二の体に激突されて飛ばされて、そんでも追い縋って自陣までプレッシャーかけつつ守備に戻ったところだ。
 清二がやや強引にフィニッシュに持ち込んで放ったボールは、俺のプレスが効いてかどうなのか、これまたポストに弾かれた。
 そのボールを神戸が拾って繋げて、そうなったら俺も持ち場に帰らないといかんだろうと今、全速力で戻ってきたところだ。
 つまりは、ちょっとばかり息が上がっている状態だということだ。

 そんでだ、今ボールを持っているお前が、どこで覚えてきたのか小洒落たフェイントで相手を交わしてキープしたボールを、どうしようとしているのかを見ている。
 お前は俺に背中を向けている。
 逆の左サイドに視線を投げている。
 だけどその背中が俺を意識しているのを、俺はわかっている。
 
 ノールック?
 
 いやいや。
 
 ここでそんなんされてもめっちゃ困る。
 左にいるだろ、よく飛べる奴が。
 あの人に任せてみろ。
 足を使わせたら溜め息しか生まない人だけど、物理的に頭を使わせればそれは得点になるはずだ。
 
 それなのに。
 足が。
 タカの足が動く。
 
 柔らかい足首が、トントンとボールに触れるとそれはトーンと転がりだす。
 あほーーーー!!!

 ボールは、タカの足元から発射され選手の足元を貫いて右サイドへ抜ける。
 地を這うボールに追いつけと言うか。
 まだ浮かせてもらった方が滞空時間分追いつける可能性は上がるのに。
 そこで敢えてグランダーのボール。
 頭悪いんか、意地が悪いんか。
 ギアをトップに入れながら見たタカは、ちらりと俺の方を見て追いつけるか?と伺うような顔をした。
 
 もう一つだけ、言っておく。
 
 俺のスピードを、なめるな。
 
 容赦のないキラーパスに向かってかろうじて伸びた足は、ボールの軌道を変え、キーパーの脇を抜けてゴールを揺らす。
 雄たけびを上げるだけの酸素が残っていない体に溢れた喜びをガッツポーズに変えると、アシストを決めたパサーが右手を差し出してきた。
 力いっぱいに拳を打ち付ける。
「ナイスシュート!」
 優しくないパサーの左胸に、いつもよりも強く拳を打ち付ける。
 最後にもう一つ。
「とーぜん」


2007/3/14
連携タカ英。

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