深夜のテレビは熱気の渦だった。
赤道が走る国の片隅に、煌々と浮かび上がるスタジアム。
建物が声を発している。
低くもあり、高くもあり。
人の声のようにも、動物の声のようにも聞こえた。
やがて鳴り響く荘厳なファンファーレ。
訳もわからず興奮した。
しっかりとした足取りで姿を見せた男達に、信じられないほどの歓声が降り注いだ。
それに笑顔で応えるわけでもなく、男達は厳しい顔をして自分の歩く先を見つめている。
自分の知っている、どの大人の男とも雰囲気が違った。
かっこいいと思った。
サッカー選手って、かっこいいと思った。
ホイッスルの音すら聞こえなかった。
スタジアムの声はピークに達し、青い波がどうにかなりそうなくらいに打ち震えていた。
力強さを感じるガッツポーズ。
あふれ出る笑顔と抱擁と、涙。
あそこに立ちたいと思った。
降り注ぐ歓声のシャワーを浴び、あんな風に泣いてみたい、笑ってみたい。
あの芝生の上に、立ってみたい。
サッカー選手になりたいと、思った。
目の前に広がるフィールドの緑は三ヶ月前には最悪のコンディションと噂されていたが、グラスキーパーの手によって最高の状態に整えられていた。
日本との時差一時間半。
熱帯のこの国に駆けつけた青いユニホームは打ち震え、いつもの倍の報道陣が期待と冷静さを込めた眼差しを向けてくる。
気合を入れるための掛け声が時々上がり、それに応える。
緊張を闘志に変えるため、胸のエンブレムに触れた。
太陽の使いと伝えられてきた三本足のヤタガラスは、世界へ導いてくれるだろうか。
今までずっと戦ってきた不安を、今日こそ打ち負かしてみせる。
自分達の中からも、サポーターの中からも。
不安を消して、喜びに染め上げる。
そして、幼い頃の自分がそうだったように、小さなフットボーラーが今日のピッチを渇望すればいい。
憧れろ。
歩き出せ。
その先には歓喜があるのだと、俺が教えてあげるから。
見つめていて。
青の軌跡を。
日本代表、アジア最終予選突破おめでとう!!!
独行きの切符獲得一番乗り!!!
これからの苦難の道も、ともに歩きます。