フッボーで30のお題
空11:チャージ



「タカ、それどうした?」
「どれ?」
 居残り練習後のロッカールームは二人きり。
 汗だくの練習着を脱いだところで英介に声をかけられ、高山は振り返る。
「その痣」
「痣?」
 英介の指が指すのは左脇腹の背中寄り。
 見えにくいが確かに青黒く変色している。
「あー、たぶん、この前の代表ん時にやった」
「タカのマーク激しかったもんな」
「まぁ、ガツガツ来るってわかってたし」
「すっげ痛そう」
「見た目ほどじゃない。中身は問題ないし」
 ケロリとする本人の前で、英介が顔を顰めている。
 よほどの見た目になっているのだろう。
「最近、痣とか増えたな」
「あー、そうかもな」
 ココにもあると、腕を指す。
 無数に浮かび上がる痣は試合を重ねる度に増え、何時の間にか消えていく。
「痛々しい」
「人のこと言えるか」
 英介のサポートパンツの下の腿にも、スパイク型の痣が出来ているのを知っている。
「お前に比べたらまし」
 呆れた視線を投げられた。
「いいだろ。選手の勲章だ」
 言い返すと、つまらなそうに口唇を尖らせてタオルを被った。
 ペタペタと足音をたてながらシャワールームの方へと歩いていく。
 何かマズイことを言っただろうかと首を捻っていると、シャワールームの入口から踵を返した英介がドンと抱きついてきた。
「……っ!」
 さっき痣が痛そうだとかという話をしていなかったか。
 背中に回った腕が打撲の上を掠めて、さすがに痛い。
 汗で濡れた髪の毛の間に手を差し入れて、屈むようにと促される。
 引き寄せられたと思ったら、首筋に英介の顔が寄り、
「いてっ!」
 噛まれた。
 ガジガジと首筋を強く噛まれ、仕上げにキスマークを残すように肌を吸われる。
 満足したように離れると、
「マーキング」
 目を細め、またパタパタとシャワールームへ掛けていった。
 ロッカールームの鏡に映る自分の首筋には、誤魔化しようのない痕が浮かび上がっていた。
 色気の欠片もない痣なんかよりも、ずっと目立つ印が。
 本人はご存知ないだろうが、代表戦で大きな痣をつくる前から、そこには痣ができていた。
 代表戦の前に出したちょっかいに過剰に反応した英介の足が作った、小さな痣が。
 お前の印なんて、至るところに残ってる。
 二の腕に薄っすら残る小さな小さな傷は、英介が情事の最中に理性を飛ばして噛み付いてきて流血した痕だし、揃いのリングの下は日に焼けず白いラインを引いている。
 じくじく痛む首筋の痕をさすりながら、今度は英介に自分の印を残してやろうと高山はシャワールームへ向かう。
 愛する人と、愛するサッカーと、その両方がつけた痕を絶やさず僕らは日々、生きているのだ。


1005/11/3
獣ちっくなラブ。

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