ベンチウォーマーをいう単語の皮肉さに、耐えられた者だけが生き残る。
温まるプラスチック製のベンチ。
冷えていく生身の魂。
カチコチに凍った魂を砕いた者は、静かにこの世界を去っていく。
ベンチにすら辿り着くことが困難なこの世界で生きていくために必要なのは、見えないほど小さな炎でも決して消してしまわないこと。
もうすぐ前半が終了する。
アップをしていたリザーブメンバーはベンチに戻され、その戦況を見守り、各々の胸の中で分析していく。
このゲームに足りないものは何か。
そしてその欠けている部分に、自分の持ち味がぴたりと当て嵌まり、埋めることはできないか。
チームが勝っていれば喜びと共に焦燥を、負けていれば悔しさと共に怒りを生じさせながら。
誰かが長い溜息をついた。
相手のゴールネットが揺れている。
スタジアムはざわめき、コーチ陣は拳を固める。
腕を組み、静かにピッチを見つめるベンチウォーマー達の気持ちは乱れ、願う。
あそこに立ちたいと。
ラインを超えて、十一人の中の一人として数えられたいと。
機が熟す瞬間を待つ。
俺の名前を呼んで。
呼んで。
他の誰の名でもない。
俺の名だ。
「行けるか?」
確認されるまでもない。
「はいっ」
託される戦術を頭に叩き込みながら、喜びを闘志に変える。
温めたベンチからは、馬鹿でっかいチャンスが生まれるのだ。
2004/11/18
11月17日シンガポール戦は控えメンバー中心のスタメンで行われました。その前にこれを書いていたんですが、試合を観てアップ。耐えると言う行為はサッカー選手にとって一つの技術なのかもしれない。