BSシリーズ今後の傾向アンケートへのご協力ありがとうございました
感謝の意を込め、最多票の「エロ」を皆さんへ(^‐^)v
週刊誌には、繁華街の店前でキスをする男女の姿が掲載されている。
何かと話題を生んでしまうサッカー選手と、グラビアアイドルの名前が書き立てられている。
「……ごめんなさい」
椅子に腰掛け足を組みどうでもよさそうに雑誌を捲っている高山の正面で、英介は正座をして俯いている。
はぁ、とわざとらしい溜息は高山には珍しいリアクションだ。
「湊さん、だいぶ酔っちゃっててさ。タクシー乗り場まで送って行くのに支えてたら、絡まれてそうなっちゃったんだけど……、その、事故というか、不可抗力と言うか、湊さんにも俺にもそんなつもり全くないし……」
言い訳の声も小さくなる。
もう一度、大きな溜息が返ってきた。
「プロ野球選手、お笑い芸人ときて、グラビアアイドルか」
これまでは前科二犯。
いずれもハグだとか酔った勢いの抱擁だが、繁華街で張っていたらしいカメラマンに激写されてしまっている。
ケラケラと笑いながらのシーンであることは写真からも伝わるらしく大事にはされなかったが、目の前で不機嫌面を隠しもしない男には面白くない記事だろう。
英介にその気など欠片もないことは高山も理解している。
英介がつくる隙が気に食わないのだ。
英介自身、マズイなとは思っている。
自分は、スキンシップをするのもされるのも嫌いじゃない。
ただ高山は、そういうタイプじゃない。
自分にだけだ。
意味もなく触れ合うのは、自分とだけだ。
反省はしているし、悪いことをしたという自覚があるのに重ねてしまった三犯。
それでも、チームの広告塔の役割も果たす英介を、高山は拘束したりはしない。
広い交友関係にも寛大で、昴に連れられて顔を出す合コンも咎めたりはしなかった。
「……ごめん、なさ、ぃ」
今まで放し飼いにされていることに甘えすぎていたかもしれない。
高山の堪忍袋の緒は丈夫にできているはずだが、それも限界か。
「累積三枚出場停止」
「え?」
「俺の許可なく飲み会行くの禁止」
「……はい」
「それと、」
組んでいた足を解くと、正座している英介の前に方膝をつき顔を近づける。
あ、と思った時にはもう口唇を押し付けられていた。
触れるだけで離れた口唇は、目の前で言葉を紡ぐ。
いつもよりもずっと低く、凄みすら感じさせる声で。
「どっちが気持ちいい?」
「……は?」
「俺とあの女と、どっちのキスが感じる?」
言われたことを理解するのに数秒かかった。
「……だから、あれは事故なんだって。そんな、感じとか、ないし」
あの女、なんて乱暴な言い方、普段の高山なら絶対にしない。
三枚ものイエローカードを溜め込んでしまった自分に対して、高山はかなりご立腹らしい。
「比べてみろよ」
囁きが耳を撫でていく。
「比べてみろ」
「比べるも何も、そんな気なかったんだってば」
言葉は攻撃的なのに、口唇を撫でる指は優しい。
笑って答えてこの重い空気を消し去ってしまおうと思ったのに、上手く行かなかった。
「相手はその気だったかもしれないだろ。感触、思い出してみろよ」
「……っ、なんだよ、それ」
「柔らかかった? 甘かった?」
細めた目は冴え冴えとして英介を見下ろしていた。
問いかけておきながら、答えなど欲していないような。
そんな風に自分で傷付くようなセリフ、口にしなければいい。
さすがに英介もむっとして、高山の肩を押し返す。
「俺が悪かったのは認めるけど、そんな言い方しなくてもいいだろ」
「逆ギレか?」
「逆でもねぇよ! お前、ちょっと頭冷やせ」
立ち上がって部屋を出ようとドアノブに手をかけた。
ほんの僅か引いたドアが、次の瞬間に激しい音をたてて閉ざされた。
「お前の交友関係に口出しするつもりねぇし、男だろうが女だろうが遊べばいいよ。お前が他の奴に惚れたりしたら、たぶん俺にはわかるだろうし」
背中を覆う大きな体と頭上から降る声に怒りが秘められているのが、ひしひしと伝わってくる。
こんな風に怒る高山は初めてで、英介の心臓は凍り付く。
「だけど、俺以外の奴がお前に必要以上に触るのは我慢できない。相手がどう思っていようと、こうやってお前のこと抱けるのもキスできるのも俺だけだ」
凍りついた心臓は一気に熱をもった。
高山の腕はまるで檻の鉄格子のように、英介の体の両脇に突かれている。
ドアと高山の間に作られた空間は閉鎖的で酷い圧迫感がある。
普段、身長や体格の差を見せ付けられると腹が立つのに、今はそれが心地良かった。
俺でなきゃ駄目だって体に墜ちてしまえと言う囁きは甘すぎて、まるで毒を含んでいるようだった。
口下手な高山が並べ立てた嫉妬が、英介に罪悪と安堵を感じさせる。
早く。
早くその腕に拘束されたい。
全身が高山の腕を待っている。
背後で高山が動く気配。
鼓動がより早くなる。
後頭部にキスをされ、それが髪の毛を伝うように項に降りた。
自分でも過剰反応だと思うほど、体が跳ねた。
触れるだけの口唇がゆっくりと開いて、硬い歯が肌に当る。
温かくぬれた舌で髪の毛ごと舐め上げられて、英介は息を詰めた。
触れてもらいたがっている英介の本音を見抜いての意地悪なのか、高山の手は焦らすような緩慢な動きで英介の腰に触れた。
抱き締めるのではなく、腰骨を確かめるように手を添えるだけ。
この大きな猛犬は普段頭が悪そうにしてるのに、英介にとって不利な状況に限って頭を働かせるから性質が悪い。
大きな手がくびれのない腰をゆっくりと撫でて、内股へ移動してくる。
「なぁ、これが俺じゃなかったらどうする?」
「……っ、ぶん殴ってるよ」
「シャレになんねぇな」
余裕たっぷりに笑う振動が背中から伝わってくる。
シャツの下に潜り込み、その下のTシャツもたくし上げて腹筋の感触を確かめるように、大きな手の平が直接肌を撫でまわし始める。
何時の間にか英介の体重は高山の胸へと預けられていて、英介の希望通り高山に抱き締められる恰好になっていた。
ずいっと無遠慮に這い上がった手が乳首に触れて、何事もなかったかのように下降していく。
思わず声を上げそうになった英介は、慌てて奥歯を噛み締める。
目の前には魚眼レンズ。
冷たく硬いドアの向こうは廊下で、ここは寮で。
高山の部屋は角部屋だけれども、声が洩れれば好奇心に駆られた同僚若しくは何事かと心配した隣部屋の後輩が近付いてしまうかもしれない。
一塊の喘ぎを噛み砕くように耐えていると、背中にぴったりくっついている高山の胸が震えた。
高山の腕を欲しがって、でもこの状況で慌てる英介の姿は高山の怒りを幾らか鎮めたらしい。
「……っ、お前も後で、ぶん殴るからな」
「ちったぁ反省しろってことだ。隙がありすぎなんだよ、英介は」
呆れと笑いの混じる小言を低い声で囁く高山の手は、ジーパンのボタンを外しにかかる。
さっきまでのお怒りはどこへいかれたのですかと嫌味たっぷりに言ってやりたかったが、口を開けば声が出そうでそれもできない。
捩ろうとした体は無言のままの高山に押さえつけられ、大きな手が下着の中へ滑り込むのを許してしまう。
肝心な場所をスルーして、腿の内側を緩く辿られる。
ダボダボのジーパンがストンと足下に落ちていき、ボクサーパンツ一枚の下半身が肌寒さに震えた。
背中越しに感じていた高山の熱や鼓動は、温度もリズムも自分の体が上回ってしまってわからなくなる。
ただその存在感が、英介を安堵させる。
本当はこんな拘束、簡単に抜け出せるだけの腕っ節はあるのだけれど。
本気で嫌じゃないから委ねている。
本気で嫌じゃないってだけで、部屋のドアに押し付けられて抱かれるなんて望みもしない状況だけど。
お前だから、いいかと思ってしまうんだ。
それをちゃんと、理解してるか?
お前だけだ。
ちゃんと、理解しろ。
体を重ねる間の呼吸というのは、肺じゃないどこか他の器官から吐き出されているんじゃないかと思う。
サッカーをして息が上がるのとは全く違う。
呼吸が荒くなればなるほど、その乱れ具合に興奮する。
その吐息に色があるなら、やっぱりピンク色だ。
パッションピンクなんかは嫌だな。
桃色くらいが風情があっていい。
「……ぅあっ」
雑念に集中すれば快感から逃れられるかもと頑張ったのに、一際強く足の付け根を擦られて声が上がった。
相変わらず目の前には味気のないドア。
下着もついには足下に落ちて、英介は上半身だけ服を着込んだ状態で立ったまま高山にもたれて愛撫を受けている。
大きな手で包まれた自分の性器から滲む体液は高山の手を濡らし、指の間から滴り落ちるほど。
英介が背を反らすように跳ねても、背後の高山は揺らぐことなくしっかりと英介を支えている。
項や首筋を甘く噛んだり舐め上げたりの悪戯も忘れない。
部屋に響く水音が肌を吸い上げる高山の舌がたてるものなのか、下半身の先走りがたてる音なのかわからなくなり、ガクガクと足が震え始める。
甘えるように背後の高山の肩に頭を押し付けるような仕草を見せた英介は、もうヤバイと喘ぎを押し殺して訴える。
「……あ……、はっ……ぁ、も……ぅ」
英介の手は震えながら高山の手を引き剥がそうとする。
抵抗を無視して、高山は骨太の指でぬめりを広げるような愛撫を繰り返す。
「英介」
耳に直接吹き込むような呼び掛けに、英介の呼吸が激しく震えた。
「や、ぁっ。タカ、声……、出るからっ」
消え入りそうな懇願をこぼした口に、高山は自分の指を差し出した。
熱い息がかかり、それ以上に熱い口内に高山の人差し指が誘われる。
口唇で挟むだけでは声は殺せず、英介は深くその指を咥えて歯をたてた。
同時に高山の指が先端を抉るように強く握りこむ。
僅かな痛みと、それを消し去るくらいの強烈な快感。
こんなところで、と白濁した体液を高山の手に放ちながら、頭の片隅に追いやられた冷静な自分が呆れている。
高山の手から滴った自分の精液が、自分のジーパンに沁みをつくっていた。
「英介、ちゃんと立って」
ぐったりとした体を支えていた高山はまだ何かしようと言うのか、英介の体を冷たいドアに預ける。
足に力の入らない英介は、ドアに縋りつくように立たされる。
一人でイかされて、人の温もりが一番欲しいと思っている時にこの仕打ち。
やっぱりこれは、所謂、お仕置きという奴なんだろうかと、ここに至ってようやく英介は考えついたが後の祭り。
濡れた指が双丘に滑り込んでくる。
がくがくする足は、足払いの要領で肩幅程度に開かれて、自然と後腔にも触れやすい体勢をとらされた。
閉ざされているそこをゆるゆると摩ると、英介が鉄のドアをカリっと指先で掻いた。
「……っう、ぁ、あ」
異物が侵入してくる感触に、英介は苦痛に似た呻き声を上げる。
初めて体を重ねた日から何度か抱き合ってはいるけれど、仕事に差し障りがないように気を使っている内に、一つ屋根の下にいながら一ヶ月以上何もないなんてこともある。
英介の蕾は、高山の感触をすっかり忘れたように硬く閉ざされる。
踏み込んだ先の柔らかい内部の粘膜は、重ねた情事を記憶しているけれど。
ぬめりを利用しながら時間をかけて、英介に痛みを与えないようにと侵入していく。
がりがりと猫が爪を研ぐようにドアに縋る英介も、意識して息をゆっくり吐き出しながら高山の行為を許している。
一度熱を吐き出した前を愛撫すると、簡単に勃ち上がり蜜をこぼし始めた。
前と後ろの刺激とで、英介の体は一気に熱を上げる。
指を締め付けていた内壁も、ゆっくりと溶け始める。
バターが溶け始める光景をイメージするのは卑猥すぎるだろうか。
中も外も、とろりと溶けて甘い蜜になってしまいそう。
指を増やし閉ざされたそこを広げるように動かしたり、絡まりつく壁を関節で擦り上げたりして英介を鳴かせながら奥へと進むと、英介の腰が自ら求めるように揺れ始める。
「痴漢っぽいな。なんか」
「ん……バカなこと……ぁ、ゆーなぁっ」
「されたことあるか?」
「ぁ……る」
「……」
「前歯……ぁ、……っ、折って、やった」
ドアに額を押し付けて俯いたしどけない姿で、武勇伝を一つ暴露してみせる。
感じていても英介はよく喋る。
抱き合っている最中だから話せることを、喘ぎと共に紡ぐ口唇が愛しい。
絶頂に駆け上がる頃には、話せる言葉は少なくなるけれど。
「俺の前歯も欠けるか?」
「殴るかもしれないけど、……っ、タカの顔も好きだからぁっ……、手加減はっ、する」
憎まれ口のつもりだったのに、高山は大いに喜んで顔をぶつけるように頬にキスをしてくる。
「可愛い」
一言呟くその声が、興奮に掠れていた。
愛撫を施すだけで、英介は何もしてやっていないのに。
それなのに高山が昂ぶったのだとすれば、それは自分の喘ぎ感じる姿やら体内の反応やらのせいだ。
そう思うと、背筋がぞくぞくと震えた。
「いい?」
短い問い掛けにただ頷くと、背後で高山がズボンの前を寛げる気配がした。
自分の体温とは違う屹立が下から蕾を突付くように触れたかと思うと、次の瞬間にはそれが体内へと侵入を果たそうとする。
逃げようとする腰を一気に引き寄せられ、二人が深く繋がる。
衝動に上がりそうになる声を英介はシャツを噛み、耐えた。
悲鳴を耐えたことで、体の中に放てなかった欲望が篭もる気がした。
下から突き上げられるように揺す振られ爪先が床から浮くような激しさに、自分が立っているのか転がっているのかすらわからなくなる。
何がなんだかわからないのに、声は殺さなきゃいけないと英介はシャツが破けそうなほどに噛み締める。
立ったままだと内部を貫く角度も違うのか、今までにない感覚が体を支配する。
声が出せない替わりに、涙が溢れてくる。
片手で英介の屹立を嬲り、もう片方の手でしっかりと腰を抱く高山の乱れた呼吸や呻きが耳元で聞こえてくる。
突き上げられる衝動を背中で感じ、その激しさと力強さに眩暈がした。
英介、とほとんど声のない吐息で絶頂へ導かれる。
「い……っ、ぁっ、ん――っ」
体を震わせて英介が精を吐き出すのと同時に、英介を串刺しにしていた高山の屹立が一気に引き抜かれた。
ズルリと濡れた体内を滑り出て行く感触に、達しながら英介は更に体を震わせた。
腿や蕾の辺りに熱い液体をかけられる感触がして、高山は外で達したのだと知る。
そう言えばゴムをしてなかったと思い出しながら、英介は脱力感に身を任せてずるずると座り込んだ。
一緒に膝をついた高山が英介の手をとり、爪が割れてないか確かめている。
そんなことを心配するくらいなら、最初からしなければいいのにと、息を整えながら英介は思う。
こっ酷く罵ってやろうと振り返った英介は、高山の顔を見て怒声を飲みこんだ。
今日は言いたいことを言えない日だ。
高山の顔を見て突然、英介の中に衝動が沸き起こる。
体を反転させ、高山の頬を掴んだ。
噛み付くようなキスに、高山は一瞬の驚きの後、すぐに応じた。
長く逞しい腕がすぐに背中に回り、英介を閉じ込めるように抱き締める。
後頭部を大きな手が覆い、息継ぎすら許さない。
こんな風に抱き締めて欲しかった。
キスだって、したかった。
タカとするキスや抱擁だけが気持ちいいのだと、伝えたかった。
自分は触れたがりで誰とでも抱き合うくらいはするけれど、触れ合って気持ちいいのはお前だけだ。
「……ん、はぁ……、ふ……ぅ」
二人ともまだ息がおさまらないのに何度も角度を変え、深く口付けているうちに飲み込みきれない互いの唾液が顎を伝い落ちていく。
夢中で口唇を合わせていると、突然ドアをノックされた。
「タカさーん、さっきからドアがガタガタ鳴ってるけど、建て付け悪いんスかー? 閉じ込められたりしてませんー?」
隣の部屋の後輩が親切心で声をかけてくれたらしい。
ノブが回り、がちゃりと開きかける。
「あれ? 開くし」
なんて言いながら開きかけたドアを、キスをしたまま高山の足が思い切り蹴り戻した。
バッターンッという大きな音と、ユーキが上げた悲鳴が聞こえてきた。
「ユーキ」
キスを続けようとする英介の顎を捕えて少し引き離す。
飢えて泣きそうな目に間近で見つめられた状態で、高山はドアの向こうのタイミングの悪い後輩に向かって声をかける。
「取り込み中」
激しくな、と小声で続けると、ドアの向こうでは暫らくの間があって、
「……しつれいしました」
なんとも言えない謝罪が返ってきた。
同時に、英介が高山の手を振り解くようにしてキスをしてくる。
一旦途絶えた口付けが激しさと熱を取り戻すのはすぐだった。
乗り上げるように抱きついてくる英介を受け止めながら、そう言えばと高山は思い出す。
英介はセックスの最中のキスを欲しがる。
一度口唇を合わせる度に、好きだという感情が深まって高まって濃くなっていくのが気持ちいいのだと、揺さぶりながら息絶え絶えに言わせたことがあった。
さっきの体勢じゃ満足にキスもできていない。
声もいつも以上に我慢させた。
その分を取り戻すように口唇を貪られる。
英介はいつも、快感だけではなくて高山の心も求めてくれる。
なぁ、俺は、こんなに嫉妬深い性格じゃなかったんだ。
今まで付き合ってきた女性達が他の男と会おうがどうってことなかった。
年上の女性にとって自分はただの遊びで、それを自分自身わかって付き合っていたからだ。
だから自分はもっと大人らしく振舞えるんだと思っていた。
聞き分けよく、ある程度は利口でいられるんだと思っていた。
お前だけだ。
俺のものであればいいと願ったのは、お前だけだ。
だからお前が、こうしてキスを仕掛けてくるのがたまらなく嬉しくて、愛しいと思うよ。
「後でユーキに謝っとけよ。あいつ、あのままじゃ人間不信になる。いい子なのに」
嵐のような口付けが落ち着いて、英介が疲れ果てたように高山の肩に頬を寄せて呟いた。
舌足らずに聞こえるのは、激しいキスで舌が麻痺しているせいだろう。
お互いの口唇を貪るようにして、舌を絡めて吸って噛んで。
セックス以上に激しかったかもしれない。
「ぜってー、謝らねぇ」
「ガキか」
「あんまりユーキに構うな。面白くない」
英介の呆れたような溜息が首筋を擽った。
「タカがこんなにヤキモチ妬きなんて知らなかった」
「俺も知らなかった」
宥めるように背中を摩りながら高山が零した一言を、英介は胸の中で噛み砕く。
それって、俺だけってこと?
浮かんできた答えを確認するのも恥ずかしくて、英介は黙って剥き出しの脚を折って丸くなった。
「ベッドが目と鼻の先にあるのに、なんでこんな所で……」
冷静になってドアを見ると、自分が放った白濁の体液が散っていた。
あまりにも居た堪れない。
「これで気をつけようって気になるだろ。次何かあったら、不可抗力だろうがなんだろうが、縛るか屋外行きだな」
縛る、屋外、と頭の中で繰り返して、英介は顔を真っ赤にしながら体を起こした。
「……そういうこと、したいの?」
「あー、そんな、セックスしたいってわけじゃないんだけど、俺だけが知ってる顔が欲しい」
口下手だと思っていたのに、口説き文句だけはよく口にするようになった。
昴の口先だけのトークとは違って、高山の言葉は一つの愛撫のように心も体も感じさせるから性質が悪い。
「もう……、殴る気も失せた」
「覚悟してたのに」
「殴られたいならそう言え。一発かましてやる。ちなみに俺に殴られた痴漢は前歯折られた上に眼鏡のレンズも割られた。たぶん、肋骨もいったかな」
「……蹴ったのか。過剰防衛じゃねぇの?」
「だから警察に突き出せなかった」
「恐ろしい」
「嫌いになった?」
「や、ますます惚れたし、なんか安心した」
ごち、と額をぶつけて笑い合うと、もう嫉妬も罪悪感も吹き飛んでいた。
音をたてたバードキスを一つ。
まるで自分のものだと言わんばかりに抱き締められて、お前だから殴らないんだと主張されて。
我ながらアホらしい痴話喧嘩だった。
「タカ、風呂と洗濯」
抱えていくのが当然であるかのように、英介は高山の首に腕を回す。
「いつも姫抱きにしたら怒るのに」
「膝がガクガクするんだよ」
ぺしぺしと頭を叩かれながら英介を横抱きに抱え上げた。
けれど行き先はユニットバスではなく、目と鼻の先にありながら使われなかったベッド。
唖然とする英介の上に圧し掛かると、テキパキと服を脱いでいく。
「さっきは顔が見れなかったから」
「お前が後ろからしたんだろ!」
「これだとキスもできるし」
「……っ!」
嬉しそうな顔で額に口唇を寄せられて、英介はやはり文句を飲みこんだ。
事の始まりは自分の不注意。
今日は大人しく高山の意を受け入れるべきか。
その高山の意思だって、嫌ではないのだし。
さっきできなかった分とばかりに正面からしっかり抱き締められ、体が喜ぶ。
「なぁ」
「ん?」
「……好きだ」
天井を見ながら消え入りそうに呟いたその一言は、しっかりと高山の耳に届いたらしい。
「うん」
肋骨に皹でも入ったらどうしてくれるんだろうかと、心配するほど腕に力が込められる。
言い訳や反論なんて、本当はどうでもよくて。
ほんの些細な不和を消し去るのに必要なのは、心から告げるたった一言若しくは愛情たっぷりのキスや抱擁だ。
そして、哀れな後輩へのアフターケアも忘れずに。
翌日、ユーキが奢られたのは苦手なブラックコーヒー。
そしてたっぷりの沈黙と謝罪のための短い言葉。
逆にそれはユーキを怯えさせたのだが、なんだか何時になく甘い空気を発している二人がそんなことに気が付くわけもなく。
ユーキはひっそりと、もう二度と高山の部屋のドアは開けないと心に決めた。
04/10/22
「BSシリーズに増やして欲しい傾向は?」のアンケートにご協力ありがとうございました。
感謝の意を込め、一番票が多かった「エロ」をアップしました。
甘いのは毎度のことなので、せめて体位で変化を、ということで、英介は大変なことになりました。喧嘩してても、会話を書いていくうちにラブラブ〜になるので弱りものです(笑)そしてエロは難しい。精進します!