一点目はPKだった。
二点目はセカンドボールを豪快に叩き込むボレーだった。
そして、今、三点目のチャンスが訪れていた。
一試合中に同じ選手が三得点を上げることを、サッカー用語でハットトリックと言いまして、それはかなり難しいもので、 本当に難しいものでして、二点までは獲れることがあったも三点目となるとかなり難しいものになるのですが。
PKなどの幸運な要素が重なって、高山浩二はその難しいハットトリック達成を目前にしようとしていた。
ボールはコーナーフラッグを撫でるようにラインを割り、線審のフラッグがびしっとコーナーを指した。
あぁ…………
サッカーにかけての集中力は半端でないはずの英介は、その瞬間サッカー以外のことをちらっと考えてしまっていた。
富永に肩を叩かれ駆け足でコーナーに向かう背中を見て、期待よりも不安が募る。
自チームに訪れた大きなチャンスなのに、素直に喜べないのはあの約束のせいだ。
付き合って数ヶ月間、二十歳超えた成年男子がキス以上の行為がないままと言うのは身体的な事情において少々苦しいものがある。
経験がないから進展が訪れることにひどく臆病な英介に痺れを切らし、行動に出たのは高山だった。
部屋で押し倒されてキスだけでは物足りないと訴えられ、その場凌ぎで出した答えが成果と報酬。
英介が出した課題は二つ。
一、 神戸は既にファーストステージを制覇している。今行われているセカンドステージでも優勝して、両ステージ制覇する。若しくは、セカンドステージを落としたとしても十二月のチャンピオンシップで優勝し、年間王者となる。
二、 未だ高山が達成していないハットトリックを達成する。
この難問の一つをクリアするかもしれないチャンスが、目の前に訪れたのだ。
ゴールが入れば自分の貞操の危機が一歩近付く。
今までにない複雑な心境で、英介はコーナーに立った高山を見た。
自分が立つのはファーポスト付近。
相手チームからはちらちらと警戒の視線を投げかけられるが、それも心配ない気がする。
アレは絶対、直接狙う。
高山が約束を思い出しているかはともかく、目つきが狙う目をしている。
審判が運命の笛を吹く。
蹴り出されたボールは意思を持っているかのように空中で軌道を変える。
父さん、母さん、兄ちゃん、友里、ごめんなさい。
僕はどうやら、清い体とはバイバイしなければならないようです。
ふぅわりと柔らかな軌道を描きボールは落ち、高山は珍しくガッツポーズで飛び跳ねた。
危機は着実に一歩近付いたが、気が付けば英介は高山に飛びついて喜びを分かち合っていた。
あぁ、ちくしょう。
これ以上の快感なんて知らねぇよ。
今まさに、天国にいる気分なんだから。
2005/7/10
初H前の二人。英介が出した課題を地道にこなしていくタカさんの図です。ハットトリックって本当に出そうで出ないですよね。あと一点が遠いんだ。そうしてみると、ゴンちゃんはすごいなぁ。