風を感じる。
例えコーナーフラッグが風になびいていなくても。
風が、生じるのだ。
苦しい方向から、希望の方向へと向きを変える瞬間。
吹き飛ばされるような突風をイメージする。
ゴール前45度。
イタリアのスーパースターが得意とするシュートゾーン。
同じくその角度を得意とする選手がフリーでシュート体勢に入った。
放たれたシュートはコースに体を投げ入れた寺井の背中に当った。
鈍く大きな音がスタジアムに響き、ボールは跳ね返る。
自由になったボールが宙を舞う。
ボールはさほどの滞空時間も要さずに地上に落ちてきた。
富永の足がそこを掬い上げる。
再び宙に浮いたボールは相手ゴールへと向けて蹴りだされる。
前線へ蹴り出されたボールは、相手ディフェンダーよりも遠くへ落ちる。
ゴールとディフェンスラインの間。
余裕でディフェンダーがものにすると思われたボールに、一足早く辿り着いたフォワード。
ボールに触れ、前へと走る。
その姿はまるで野兎。
わっと、スタジアムが揺れた。
周りに視線をやりながらも、決してスピードを緩めようとはせず猛進する。
開けたスペース。
悠々と前進する兎の目が、味方をとらえた。
きゅっとブレーキがかかったように失速し、向きを90度変えて大きなパスを出した。
ボールの先に、走りこむ白い影。
まるで走り幅跳びの選手のような助走と跳躍を見せた、9番。
高い高いジャンプから打ち付けられるヘディング。
ボールはゴールラインの上にたたき付けられ、バウンドしてネットを揺らした。
あっと言う間のカウンターアタック。
片岡昴が拳を天に掲げ咆哮し、その背中に英介が飛び乗った。
英介が昴に飛びつき、喜びを分かち合う。
時に味方をも震撼させるカウンターアタック。
小さなチャンスを必ず自分達の味方につける圧倒的なスピードと高さ。
ゴール裏に向かって拳を突き上げたツートップを、サポーターは誇る。
見たか、俺達のオフェンスを。
サッカーの醍醐味は、勝利よりもゴール。
主審のホイッスルが告げる勝利は勿論嬉しいが、予期せず揺れたゴールネットがもたらす歓喜の瞬間は、勝利の瞬間よりも人々を興奮させる。
それを、知っている二人のストライカー。
普段は意地の悪い言い合いのできる先輩後輩だが、ピッチの上ではお互いの弱点を補い合い、得意なプレーを引き出しあう。
阿吽の呼吸のツートップだ。
同じ飢えを抱えた獣の呼吸はチームに風を呼ぶ。
ゴールへ。
勝利へ。
歓喜へ。
2005/4/23
「2トップ」の内容にしようか迷ったのですが、内容がカウンターなので。強いFWも好きですが、高いFWや速いFWが好きです。バランスのとれた選手が理想かもしれませんが、何か一つ誇れる武器をもった選手が好きなようです。