サポーター達への10のお題
02:大番狂わせ



神戸に生まれ育ち、二十五年。
不死鳥と形容されることのある街に根付いたサッカー文化の象徴。
名前は神戸レインボーチャーサー。
虹追い人、つまりは夢を追いかけ続ける人を意味したチーム名を掲げて十五年。
俺がボールを追いかけ始める遊びを気に入り始めた頃、神戸のプロサッカーチームは誕生した。
長きJ2時代、人のまばらなスタジアムへ近所の友人達と通い続けた。
J2とは言え生で見るプロのサッカーにはドキドキしたし、大きな旗が振られ大人達が声を嗄らして飛び跳ねる、屋台があってお好み焼きやたこ焼きまで売っている。
幼心が踊らないわけがない。

そんなこんなで十五年。
自分でボールを追いかけるよりも、人がサッカーしている姿を追うことに夢中になって早何年だ?
J1昇格の歓喜も若さに任せて祝い尽くし、残留争いに一喜一憂した数年も楽しんだ。
スタジアムが埋まっていくのを見つめてきた。
ガラガラのスタジアムを右へ左へと駆け抜けて、スタジアムフードを片っ端から食い尽くしてきた俺も大人になった。
ビッグフラッグを振り、マスゲーム用のプラカードを配り、ピッチを見ている時間よりもサポーターを見ている時間の方が増えたこの頃。
クラブ側との意見交換会にも参加する栄誉を与えられたこの頃。
そろそろ上位進出へと願いを託してきたが、まさか。
まさかの、シーズン終盤にして奇跡の追い上げ六連勝。
上から数えても下から数えても大して変わらなかった順位が、上から二番目。
ありえない、たまらない。
自分の応援するチームが首位をとるということが、こんなにも気持ちいいものだとは思わなかった。
やべぇ、震える。
目の前で、俺たちのイレブンが大番狂わせを見せてくれている。
二位が一位になるということは、首位になるということで、これより強いチームが国内には存在しないということで、つまりは最強の証。
俺たちのチームが最強。
最も強い。

一点奪われて追いついて、くるりと反転逆転中。
ぶるりと体が震える。
いや、魂か。
「いけいけいけいけー!!!」
「天下とれー!!!
「えぇぞえぇぞ! おめぇら強ぇぞー!!!」
この試合に勝てば、首位に躍り出る。
見えてきた頂に、スタジアムは我を失いチームの一部と化す。
まばらなスタジアムを眺めてきた。
空席ばかりだったスタジアムが、興奮の坩堝と化している。
信じる者は救われる。
この瞬間のために、信じてきた。
情けない敗戦を、叫びたい惜敗を、力の抜ける大敗を飲み込んで応援し続けた。
歓声が一際大きくなる。
最も単調な手拍子は続いている。
堪えきれず、ピッチを振り返る。
ゴール前混戦。
ナンバーナインがボールを持つ。
俺たちは叫ぶ。

この絶叫の音量が、選手に力を与え、敵を圧倒する。

「勝負!!」

その弾道の結末が、俺たちを失望させ、歓喜の渦に叩き込む。


一サポーター視点で。スタジアムには報われたい想いが渦巻いている。

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