二十歳で挑んだアジア最強国決定戦。
準決勝惜敗。
熱帯の地で九十分を戦い、ロスタイムまでボールを追いかけパワープレーで一点を返そうとしたジャパンブルーの夢は、試合終了の笛の余韻とともに消えた。
連覇のかかるこの試合の注目度は高く、可能性が低いわけでもなかった分、落胆は大きい。
ミックスゾーンを通り過ぎていく選手は皆俯き加減で、足を止める時間も短い。
私は最年少選手を呼び止めた。
利発そうな顔にはまだ少年らしさが残るが、呼ばれて立ち止まった彼の眼差しには落ち着きがありすぎる。
天才の名を定着させつつある若き司令塔は、対戦国の厳しいマークに合いながらもそれなりの輝きを発揮したと思う。頭の良さと視野の広さを買われて代表入りしたが、この大会では度胸の良さも評価された。日本代表としての結果は頷けるものではないが、彼個人の評価は悪くないはずだ。
若き天才は無難な受け答えを繰り返し、ミックスゾーンを去ろうとしていた。
思い立って問いかけてみた。
「富永くん、悔しくないの?」
記者としての質問ではなかったと思う。
一人の人間として、この状況で優等生面をしている彼が不思議に思えたのだ。
富永は足を止めた。
こちらを振り向く一瞬、その知的な顔立ちに怒気が見えた。
「悔しいです」
声が震えていた。
声だけではない。
肩が、拳が震えていた。
「……、ありがとう」
自分が発した謝辞は、答えてくれたことへの礼だったと思う。
富永は我に返ったように視線を外すと、軽く頭を下げて立ち去った。
なるほど。
あれはとんでもない小僧かもしれない。
若き紳士なんて書かれ方もしているが、根本には悪ガキの根性が根付いているはずだ。
なるほど、これは面白い。
この歴史的惜敗は種。
いつか花咲く。
2010/7/2更新
2010南ア大会終了直後にアップしました。
若かりし頃の富永キャプテンの図。そう言えばこのキャラクターは冷静沈着な紳士と言う設定だった……と思い出しながら(笑)