※注意!!
このお話はオールキャラです。
有り得ない会話がなされています。
原作の忠実なパロディではありませんので、苦手な方はご遠慮ください


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レナ、連休明けの風景



 5月の頭。
 今日からゴールデンウィークの本体みたいな4連休の始まり。
 4月の終わりのおまけみたいな週末には、友達と買い物に行ったけど、これからの連休はみんな家族と小旅行。
 パパもママも、どこか行きたいかって聞いてくれるけど、どっちも客商売で掻き入れ時だから勿論無理な話なのはわかってる。
 だから、いいよって言ったのに、パパもママもなんだか申し訳なさそうにする。
 いいんだってば。
 レナでのバイトは楽しいし、勉強にもなるし。
 勉強って社会勉強だったり、人間観察だけど。
 そんなこんなで、連休は瞬く間に過ぎていった。
 休み明けに、みんなは旅行の話に花を咲かせて、家の手伝いをしてたって言う私に同情するんだろうけど、ゴールデンウィーク中のお手伝いは特別手当がでるからいいの。
 まだまだ、新婚さんみたいなパパとママと旅行したって、こっちが恥ずかしくなるだけだし。
 連休の間、常連さん達はこの盛況振りを予想してか一度も現われなかった。
 そろそろかな……
 お客さんの入りも通常の状態に戻り始めた、連休最終日の日曜日の夕方。
 カラン……カラン……
「いらっしゃいませー」
 ドアベルを鳴らしたのは、宇野のおじさまと叶さん。
「よう、安見。なんだか、久しぶりって気がするな。菜摘さんも」
 叶さんがそんなことを言いながらカウンターに腰をかける。
 宇野のおじさまはそこから一個分のスツールを空けて。
「本当に」
 ママもやっと通常通りの時間の流れを取り戻した店内にほっとしたような顔をしながら笑って、コーヒー豆を炒り始める。
 ほとんど毎日、三日と空けずにやって来るから、確かにそうかもしれない。
 宇野のおじさまも、パイプに火を入れずに店内に漂う時間とコーヒーの匂いを楽しんでいる。
「叶さんと宇野のおじさまは、この連休はどこか行かなかったんですか?」
「行ってきたぜ? 大阪の方まで。まぁ、浮気してる旦那の素行調査なんだけどな」
 おどけた調子で叶さん。
 私立探偵も弁護士さんも、あんまり連休なんて関係なさそうだものね。
「本当は、キドニーと桜でも見に行く予定だったんだがな」
「連休明けに難しい事件の裁判があるんだ。その準備に追われていて、やっと今日時間が空いた」
 溜息をつきながら言う宇野のおじ様は確かにちょっと、お疲れみたい。
 いつもよりもずっと顔色が悪い。
 そのとなりの叶さんの顔に、小さな引っかき傷発見。
 ははーん、宇野のおじ様にちょっかいだして返り討ちにあったのね。
 叶さん、女の人相手ならいくらでも上手に気障に立ち回れるのに、宇野のおじ様が相手だと勝手が違うのね。
 でも、かっこ悪い傷つくってまで一緒にいるってことは、叶さんの病も深いとみたわ。
 で、引っ掻いたりしながらも一緒にいてあげる宇野のおじ様もなんだかんだと言って、嫌いじゃないんだろうなぁ。
 叶さんのこと。
 宇野のおじ様は素直じゃなくて、叶さんはストレートすぎて。
 でも、叶さんはそういうところを楽しんでて。
 子供みたい。
 子供みたいと言えば、もっと子供っぽい、ある意味バカップルが知り合いにいるのよね……
 カラン……カラン……
 ほうら、来たわ。
「いらっしゃいませ。坂井さん、下村さん」
 下村さんとその天使。
「よう、安見。宇野さんと叶さんも来てたんですか」
 坂井さんが宇野のおじ様の横に腰掛けると、下村さんは坂井さんの隣に腰掛ける。
 宇野のおじ様と叶さんの間にある一個分のスツールの距離が、なんだか叶さんを淋しげに見せる。
「坂井と下村はこの連休にどこか行かなかったのか?」
「ずっと仕事でしたよ。ただ昨日、社長が無理矢理有給休暇くれたんで、久々に買い物とか映画とか行ってきたところです」
 川中のおじ様らしい押し付け休暇を、二人はデートに費やしたってわけか。
「デートとは羨ましいな」
 叶さんの本音。
「羨ましいでしょう?」
 下村さんの勝利の笑み。
 何について張り合ってるのかはわかんないけど。
「叶」
「下村っ」
 宇野のおじ様と坂井さんの咎めるような呼び掛けに、叶さんと下村さんは同じタイミングでぺろりと舌を出した。
 思わずママと私が笑う。
 むすっとした坂井さんの隣で、下村さんが突然うっと呻いた。
 屈みこんで、脚をさすっているみたい。
 屈みこんだ拍子に見えちゃいました。
 首筋にくっきり残るキスマーク。
 叶さんの引っ掻き傷とはちょっと差があるわね。
 これは。
 坂井さんって、本当に時々下村さんに甘くて自分の欲望にも素直だから。
 そういうトコロは坂井さんらしい。
「そういや、さっきドクのところに寄ってきたんだが、お前のトコの子分が来てたぜ?」
「えっ?」
「喧嘩したとか言ってたな」
 ちょっと厳しい顔つきになった坂井さんが、がたんと席を立とうとする。
 それを下村さんが、手を掴んで引き寄せた。
「昨日と今日の二日間は、俺に付き合うって約束じゃなかったかな。坂井くん」
 面白くなさそうな口調は拗ねた子供みたい。
 坂井さんもしまったみたいな顔をして、仕方なさそうにすとんとスツールに座り直した。
 こういうトコロが、バカップルなんて思われちゃうトコロなんだけどな。
 それを叶さんは羨んでるのよね。
 宇野のおじ様と叶さんは騙し合いって言ったら言葉が悪いけど、かけ引きみたいな恋をしてて、坂井さんと下村さんはじゃれ合ってるのよね。
 下村さんが坂井さんとからかう時の坂井さんの反応と、宇野のおじ様が叶さんにからかわれた時の反応とか仕返しとかは、なんとなく似てるんだけど。
 バランスの悪いカップルよね。
 あら、またお客さん。
「お、おそろいか」
 川中のおじ様と藤木のおじ様。
「いらっしゃいませ。みんな、狙ったように空いた時間にやってくるのね」
「三日以上もここのコーヒーを飲まずにいられるか。秋山はまだ忙しそうだな」
 川中のおじ様の大きな手がぽんっと私の頭を叩く。
 川中のおじ様が下村さんの隣で、そのすぐ隣に藤木のおじ様。
 やっぱり、宇野のおじ様と叶さんの間の席一個分が淋しげ。
「おじ様は何してたの?」
「俺はいつもの通りさ」
「どこにも行かなかったの?」
「お前と一緒だな」
 そうだけど。
「頑張ったご褒美に、今度どこか連れてってやろうか?」
「パパが怒るわよ」
「面白いじゃないか」
「社長、笑い事じゃすまなくなりますよ」
 苦笑しながら藤木のおじ様ががたしなめると、川中のおじ様、楽しそうに笑ってる。
 この二人、熟年夫婦って感じがするのよね。
 一番安定してるって言うか、夫婦って感じ。
「で、坂井と下村はのんびりできたのか?」
「おかげさまで、楽しいデートもできました」
「デートじゃねぇって言ってんだろう!」
 パシンっと一発。
 坂井さん、容赦ない。
「一緒に買い物して映画見て。それのどこがデートじゃないんだ、坂井」
 叶さん、それ、恨みがましいわ。
「叶も苦労してるんだな」
「川中」
 宇野さんの低い声に、焦ったのは叶さん。
 機嫌を損ねちゃうと、あとが大変なのね。
 あらあら、宇野のおじ様、ご馳走様って言って立ち上がっちゃった。
 叶さん、川中のおじ様を一瞥。
 まぁ、怖い。
「ちくしょう。これで、今晩もお預けだ」
 苦々しく呟いて、ポケットの小銭をあさる叶さんの後頭部に……
 カツーン。
 入り口から、宇野のおじ様の放った五百円硬貨が命中。
 カランカランと涼しげな音を残して、出て行っちゃった。
「……いいコントロールしてるじゃねぇか」
 床に落ちた硬貨を拾い上げて、足りない分を一緒に置く。
 忍び笑いに、皮肉に笑って、
「あーゆートコロが魅力じゃないか」
 自分に言い聞かせるようになっちゃった捨て台詞に後悔しながら、すごすごと帰って行った。
「さて、俺達も残り少なくなった休日をあつーく過ごそうぜ?」
 と、下村さんがスツールを滑り降りたところで、ごすっと言うような妙な音。
 呻いた下村さんが、床にしゃがみ込んだ。
 あーあ。
 懲りない人だなぁ。
「ご馳走様でした。社長、藤木さん、お先に失礼します」
 坂井さんは、そう言うと踵を返して出て行く。
 追えないほどダメージを受けてる下村さんが、ようやく起き上がる頃には表の駐車場から車が一台エンジン音を響かせて出て行くところだった。
「懲りない奴等だな」
「叶さんじゃないですけどね、そう言うところがいいんですよ」
 イテテと呻きながら下村さん。
 自分を慰めるみたいに、首筋のキスマークをさすってる。
「もうちょっと参考になるような恋愛してくれません?」
 私が言うと、下村さんは苦笑う。
「恋愛って言うよりは、勝負だな。こりゃ。そう言うのはパパとママに習いなさい」
 ヒラヒラと白い手袋をした手を振って、下村さんも店を出た。
 歩いて帰るのかしら?
「いい勉強になるだろう? 安見」
 カウンターから川中のおじ様がウィンクしてくる。
「ためにはなりそうもないけど」
「あいつらを見習うなよ。見習うなら俺達か、パパとママだな」
 藤木のおじ様の困った顔。
 みんな、ベストカップルなんだけどね。
 ホント、ごちそーさまでした。


2001/05/23
10700HITのキリリクはげしょ様からで、安見視点の下坂でした。
下坂メインにしようと思ったんですがいろいろと出てきちゃいました(笑)一番報われてないのが、叶さんだったりして。安見ちゃん一人称に初挑戦しましたが、どうなのでしょう。なんだか、安見ちゃんらしくないような………小悪魔チックですね(苦笑)毒され気味の安見ちゃんです。

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