※注意書きそして、前書き
このお話は当サイト「Films」の20000hit記念に企画した小説です。
管理人は皆様への感謝を捧げるために企画しました。決して皆様の気持ちを裏切ろうとか思ってません!
なんでこんな前置きかというとこの小説は、「Films」迷物の学園モノ下坂なうえに、何かの拍子でBBSで話題になった園児編を加えたスペシャル版です。
左手がブロンズになっちゃったおっかない天使命な下村氏も、可愛子ちゃんだけど迂闊に触ると怪我するぜな坂井氏も園児です。
そのへんのところしっかり理解してから読んでいただきますようおねがいします。
そして、読了後に杉山を嫌いにならないでください。
「居残り?」
カバンを持った下村が、机に突っ伏している坂井を見下ろして鸚鵡返し。
「この前、西尾センセの授業さぼった時に小テストしたんだろ? ソレ」
「あぁ、アレか」
「それと秋山先生の提出プリントまだだから、ソレ」
この前、坂井は一日授業をさぼり倒した。
もっとも、下村の女関係に関してちょっとした嫉妬をしてしまったからなのだが。
定期考査も近いから仕方ないといえば仕方がない。
「先、帰ってていい。んで、飯」
「あぁ、そっか。今日はお前んちのもうちのも留守か」
お隣のよしみで下村家も坂井家も仲がいい。
下村にとっては非常に都合がいいことに、よく旅行にも出かけてくれる。
下村の姉は姉で、結婚して家を出た。
「じゃあ、先帰るな」
「あぁ」
「頑張れよ」
べたりと机に伏したままの坂井の髪の毛を乱してから、教室を出ると西尾が教科書やらを手にこちらに歩いてきたところだった。
ぺコリと軽い会釈をすれば、
「なんだ、帰るのか?」
ときた。
苦笑しながら、今日は専属のコックになるんですと言えば呆れたように肩を竦められた。
「今度から、喧嘩するときはお前がさぼるんだな。じゃないと、フォローが大変だ」
教師らしかぬ発言は西尾らしい。
この後が秋山か。
今日の坂井の帰宅はずいぶん遅くなりそうだと下村は一人淋しく玄関に向かった。
下村が家について、夕食の簡単な準備をし終えて窓の外を見るとポツリポツリと雨が降り出していた。
「……坂井、傘持っていってないよな」
自分も持っていってなかったのだから、坂井が傘なんて持っていたはずがない。
なんだか、旦那の帰宅をまつ主婦のようだと思いながら下村は傘を一本だけさして家を出た。
そう言えば。
と、不意に下村は思い出し笑いを浮かべた。
ヤバイヤバイと思いながら口元を隠して。
この前、姉が結婚して家を出たその引越し準備の時に片付けをして、その時に昔のアルバムやら絵やらが出てきたのだ。
本当に小さい頃に描いた拙い絵や作文を、思わず懐かしいなぁと眺めてた。
その中に将来の夢について絵を描いたものがあった。
下村が書いていたのは、丸やら四角やら棒やらでできた男の子二人が手をつないでいるらしい絵。
はて? と首をかしげていると姉が結婚式を間近に控えた女とは思えない豪快な笑いを披露して説明してくれた。
『あんた、保育園の時から直ちゃんと結婚するーとか言ってたのよ。あの頃のあんたの夢が、ソレ。覚えてなーい? 子どもの頃だから笑ってられたんだけどねー』
何気にいろいろと勘繰ることのできる言い方をして。
確かに姉の部屋は壁一枚隔てたお隣だけども。
夜な夜な笑ってられないことをしてはいるけども。
姉のおかげで思い出したのは思い出した。
記憶も曖昧なほど幼い頃の笑ってしまえるほど微笑ましい約束を。
『なおじくんのお母さん、ちょっと遅れるんですって。もうちょっと待ってようねー』
優しい声の慰めに、小さな坂井は返事もせずに背中を向けて積み木を高く高く積み上げていた。
下村は玄関に座り込んで、靴をはいていてその声を聞いたのだ。
いつもお迎えの遅い坂井。
隣の家に灯りがつくのは下村が家に帰ってだいぶ経ってからだった。
あの時間、ずっと一人で待ってるのかなと、いつも思っていた。
昼間一緒に遊ぶ時は淋しがりやだとかそんな面は見せないで、やんちゃばかりをしているのに夕方になるとどこかしゅんとして口数も減る。
泣くのを我慢するみたいに。
パタパタと足をばたつかせて靴を脱いで再び部屋に上がりこんで、背中を向けた坂井の前に回りこんでひょこりと顔を覗き込んだ。
驚いて見開かれた眼がネコの目みたいで可愛かった。
「いっしょにかえろ」
坂井の返事はなかった。
じっと大きな目で自分を見返していただけだった。
積み木を握っていた手を引いてみた。
呆気なく坂井の手の中から積み木はこぼれて、下村の方へと引かれた。
無言で下村が坂井の手を引いて母親の前まで連れて行けば、お隣だものねとか言って一緒に帰ることになったのだ。
「あしたも、いっしょにかえろう」
他愛のない約束に、坂井がしっかりと頷いた。
「ずっといっしょ?」
そう聞いたのは手を引いた下村だった。
坂井はまた頷いた。
「じゃあ、ずっといっしょ」
へへと嬉しそうに下村が笑うと、坂井はなんだか悔しそうな顔で、
「ぜったいだからなっ! おまえがやくそくしたんだからなっ!」
怒ったように言ったのだ。
そんな言動は今もあんまり変わらない。
「うん。ぜったい。ずっといっしょ」
指きりなんて可愛いエピソードがあっただろうか。
それからテレビで結婚式だとかの知識を得て、ずっと一緒=結婚と結びつけて暫らくは坂井と結婚すると言うのを繰り返していたらしい。
俺って素直に育ってるよな。
ぱらぱらと傘をうつ雨の音を聞きながら、下村は誰も同意してくれないだろうことを考えて足早に学校への道を急いだ。
パシャンと水を弾く音がした。
視界を狭くする傘をちょっと上げて前方を見る。
パシャンと水を散らしながら、掻けてくる白いシャツ姿の坂井。
カバンで雨を避けながら、ちらりと前を見た。
視線はまた水溜りをよける足下におちる。
真っ直ぐに躊躇いなく下村の傘の中に飛び込んできた。
「俺の傘は!?」
第一声がこれだよ。
僅かに濡れた髪の毛をかきあげて睨み上げてくる坂井には、まだあの幼かった頃の面影も見える。
「相合傘」
雨の匂いを体中に染み込ませた坂井の体を何気なく引き寄せて笑うと、馬鹿じゃねぇのと思ったとおりの感想がくる。
迎えに来ることを信じて疑わなかったくせに。
あの約束を今も無意識のうちの覚えているくせに。
覗き込んだらちょっとだけ見開かれる、鋭くなった双眸。
「一緒に帰ろう」
ややあってから、かぁっと赤くなる頬。
軽く俯いてから、唇を噛んで悔しそうに、
「当たり前だろっ」
怒ったように坂井は言う。
「たまには口に出して言わないと」
「おまえは言い過ぎなんだよ」
「じゃあ、替わりにこうしよう」
あの頃じゃできなかったキスを。
数十年間変わらなかった約束を今も一つの傘のしたで果たしながら。

園児編下坂のイラストをきさらぎさんが描いてくださいましたーv
可愛すぎます……(悶絶)
きさらぎさん、ありがとうございます!!
きさらぎさんのサイトはこちら→「BIRD COMPANY」
2001/07/01
20000hit記念でございます。ここにあるのは愛のみでございます。
みなさまへの溢れんばかりの感謝の気持ちがどうか伝わりますように!!(切実)
いろいろもったいつけたことを描いていながら、園児編はほんのすこーしですね(苦笑)
期待してた方もしてなかった方もすみません(>_<)これからも頑張るから許してください。石投げないでぇ!