「少しは妬いてくれたか?」
「バカバカしい。なんで、俺が妬かなきゃならん」
ニヤニヤと笑う叶の問いかけに、素っ気のない応えが返ってきた。
「妬けよ。少しは」
「誰が」
その素っ気無さの裏にある本心をわかってしまっている叶には、そんな言葉もこちらを見ない視線も微笑ましいだけ。
「あいつらはいいな。自分の気持ちに率直で」
喉を鳴らして笑いながら、叶がカウンター越しに会話を交わす下村と坂井をちらりと見やる。
「若いんだろう」
「ナルホドね」
意識的に叶と眼を合わせないようにしている宇野を無遠慮にじっと眺めながら叶は、勝手に注がれていくビールを口にした。
宇野は変わらず、ジャック・ダニエルを少しずつ舐めているだけだ。
「坂井はいい迷惑だな」
不意に、宇野がそんなことを口にする。
叶が苦笑した。
お互いに、お互いの考えていることはお見通し。
「坂井は可愛いけどな。色気がない」
おしゃべりな殺し屋の言葉の続きを予測したのか、宇野がやっと顔を上げて、
叶を睨み上げた。
「そそるような艶っぽさがな」
笑いながら言って、叶の手が宇野の細すぎるほどの手首を取った。
ジャック・ダニエルの満たされているグラスを持っている方の手だ。
ブラディ・ドールの磨き上げられているグラスの中で、琥珀色の液体がチャプリと揺れた。
「おい」
咎める声は、周囲のことを考えてか小声。
「俺はやっぱりお前がいい」
不意に叶が、宇野の方に体を折った。
拘束したままの手首を、叶が引き寄せる。
その繊細な指に包まれたグラスから、ジャック・ダニエルを口にする。
僅かに宇野の手に零れたソレも丁寧に舐めとって、叶が体を起こした。
卑猥な口元。
にやりと笑い、宇野を見る。
完全に呆れきった宇野の顔。
その華奢な肩が大きく上下した。
「坂井をからかうのは辞めとけ。俺が恨まれかねん」
「いたいけな若者をからかう気はないさ。お前が俺の相手さえしてくれればな」
「意地の悪い男だな」
「お互いにな」
いつもの笑みと、うんざり顔。
その年も、多分もうすぐやってくる新しい年も、お互いにお互いを理解しているのかしていないのか。
曖昧な境界線を引いて、弁護士と殺し屋の付き合いは続くだろう。
2000/12/28
すみません。嫉妬した宇野さんなんか、私には書けませんでした。ので、自分からやっておきながら、中途半端……