いつかの週末の約束を果たそうと、下村と坂井は遠出をした。
土曜は生憎授業があったのだが、二人してボイコットした。
坂井が運転する下村のバイクを飛ばして、一泊二日の小旅行。
夏の終わりの海を見たいと言う坂井のリクエストに答えて、一番近い海岸へ。
「潮の匂いがするな」
「今年、海に来た?」
「それどころじゃねーよ。お前と違って、俺は夏季集中だ」
「あー、テストのこと思い出した」
「忘れられるだろう。すぐに」
「ムカツク野郎だな」
「忘れっちまえ」
残暑の海岸には、それでもまだらに人がいる。
海はもう遊泳禁止だが、浜辺の散歩をする人は多い。
坂井も、のんびりとした足取りで下村の一歩前を歩いて行く。
潮風が坂井のシャツの裾を煽る。
「坂井」
「んー?」
振り向かずに、足元の砂を見ながら答える。
「今、すっげぇ抱きたいんだけど」
歩調が少し変化した。
「まだ昼間」
平静を装う返事。
「不健康なことなんか慣れてるじゃねぇか」
「うるさい」
「抱きたいよ。俺に抱かれてるお前の顔とか見たくてしょうがない」
「……うるさいっ」
「好きだから、そうしたいよ」
「うっせーなっ!」
振り返った坂井は真っ赤で、睨みつけてくる双眸は何故か潤んでいる。
下村がにっと笑った。
「ホテル、戻ろう」
返事を待たずに踵を返せば、暫らくの間を置いて背中を追いかけてくる気配を感じる。
「恥ずかしい奴だな」
顔が見えないからか、悪態が再び始まった。
「そんな奴になんだと言って惚れたんだろうが」
ぐっと言葉につまったようだ。
「自意識過剰」
「自分を知っていると言ってくれ」
「猫かぶり」
「世渡り上手って言うんだ」
「無神経」
「クールの裏返しだ」
「変態」
「そりゃこれから見せてやる」
「スケベ」
「それもこれからだ」
「……好き」
「俺も」
また、坂井が言葉につまる。
思わず笑い声をあげた背中に拳をぶつけた。
「ばーか」
「お前には言われたくないよ」
「うるせーなぁ」
「そう言うところが好きなんだけど」
「ホントにうるさいよ。お前」
砂浜に二人の足跡がのこっていく。
今までの思い出の日々を二人で歩いて刻んできたのと同じように、これからも一緒に。
友情と恋愛をごちゃごちゃに混ぜて、その味を二人で心ゆくまで味わう。
それが、下村と坂井の恋愛公式だ。
バランスのいい筋肉のついた体は、それでもまだ少年の名残を残していてる。
今は同じくらいの背も、追い抜かれるかもしれない。
前かがみになるたびに、背中のラインが猫のように思えて下村は笑い出した。
「なんだよ」
「緊張してきたなと思って」
風呂上りで紅潮している頬が更に赤くなる。
安いビジネスホテルのツインのベッドは狭く、ぎしりと音がする。
お互いの裸なんかは見慣れたもので二人してベッドに上がりこむまでは笑いが絶えなかったのだが、口付けが加わると坂井が黙り込んだ。
女の子との経験はあっても、男同士は皆無。
二人しておっかなびっくりの手探りで高めあう。
息が乱れてきた頃にはもう、お互いが見たこともないような表情を曝け出し始める。
高い坂井の声が漏れてくる。
下村にも余裕がない。
慣れない異物感や痛みに悲鳴を上げるのを堪える坂井を労われずに、ただキスで意識をさらうだけ。
「下村っ……」
目尻から涙が溢れた。
泣き声が下村を呼ぶ。
「力抜いてくれよ。坂井。痛い」
「痛いのはっ……こっちだ!」
「怒ると力が入るだろ。ホラ、キスしてやるから上向けよ」
「痛いっ……! も、やめて」
顰められた双眸は潤んでいる。
見たこともないような表情は色っぽくて、下村の性欲をさらに煽る。
「我慢してくれよ」
フルフルと首を横に振る坂井の顎をどうにかとらえて、キスをする。
硬直していた体が、本当に少しだが弛緩する。
ゆっくりと体を揺すると、色の違った声が零れた。
坂井が自分のものになる感覚。
自分が坂井のものになる感覚。
親友としての親密さとは別の空気が満たしている。
心だけでなくて、体を触れ合わせることもずっと深い意味を持つのだと、下村は坂井を抱きながら思う。
大切なのは気持ち。
だけどそれだけではないのかもしれない。
これも、自分達の場合はの話だが。
「……好きだよ。坂井」
たくさんの意味を込めて、下村は坂井に溢れ出した想いを伝える。
「俺も……」
坂井の腕がゆるやかに上がってきて、下村の首に絡みついた。
この腕は、バイクを操ったり喧嘩をするあの力強さとは他に、こんなに優しい仕草を作り出すのかと感動する。
これまでのマンネリとも言える馴染んだ感覚に、新しく心擽るような感覚を混ぜて時を過ごしていく。
そうして、自分達は自分達のやり方で、恋愛の公式を作っていくのだ。
現場(笑)は学校ってのも折角(!?)だしなぁと思ってたのですが、それはまた次の機会に(あるのか?)。
パラレルも楽しいですねー。なんか癖になりそうですよ(笑)いつもはあまり言わないであろうセリフもふんだんに入れてみました(わかりますか?)教師陣とかもっと出したいですね。で、もしも、BDキャラで学園を作るならこんな設定、やってみました。あ、キリリク、長くなってすみませんでした。こんなところまで読んでくださってどうもですvv