※ご注意ください※
このお話は、坂井を女装させることを目的として書かれた上、オールメンバーのお話です。
管理人の趣味のみで作成されました。
坂井が女装しても大丈夫な方・坂井が性別不詳状態でも大丈夫な方のみ読んでやってください。
ちなみに18禁ではありません。



Fraulein 1



 閉店後のブラディ・ドールはいつも静か。
 女の子もボーイも姿を消した店内に最後まで残るのは、坂井と下村と藤木に決まっている。
 今日は藤木が他の店に回りに行ったので、今は不在。
 最近は、高岸も遅くまで残っていることが多い。
 今日も、日付の変わったこの時間まで残っている。
 坂井がグラスを磨く、きゅっきゅっと言う小気味のいい音が際立つ。
 穏やかな時間の流れ。
 この時間帯が好きだと思うのは、三人に共通する思いだろう。

 が、

 ばったーん!!!

 と、けたたましい音をたてて裏口のドアが開いた。
「なんだ?」
 くつろいだ空気を放っていた坂井と下村の気配が、ぴりぴりと張り詰めたものになる。
 それを察した高岸にも、緊張が走る。
 ばたんばたんと、騒がしい音がして「もう」とか「なんなのよぉ」とか言う、女の高い声が聞えてきた。
 坂井が、控え室のドアをゆっくりと開けた。
 おそるおそる三人が覗いた控え室には、座り込んだ女の子が一人。
「……坂井さーん。下村さーん………」
 泣き出しそうな声で幹部の名前を呼ぶ女の子は、ブラディ・ドールの女の子だった。
 アイコと言う名前の、最近の若い女の子と言う感じの明るい少女だ。
 そのアイコが、控え室の床に座り込んで二人………その向こうには高岸もいるのだが………を見上げる。
「どうしたんだよ。その格好」
 坂井が思わず尋ねた。
 アイコの長い髪は乱れ、上着のベージュのジャケットのボタンは飛んでしまっているらしい。
 手にはヒールの高い靴。
 そのヒールも、片方がぽっきりと折れてしまっている。
 素足で走ってきたのか、色の鮮やかなタイツは擦り切れてしまっている。
「変な男が、いきなりっ、私のバックとって逃げたんですっ。それ、それ追いかけて角を曲がったら、いきなり服掴んできて………」
 怒ったような怯えたような口調で、アイコは甲高い声で訴える。

 切れ切れで、要領を得ないアイコの話をまとめればこうなる。
 店が終わって一人で帰宅していたアイコの後ろからやって来た自転車の人物に、いきなり肩に掛けていたカバンをひったくり逃げ出したらしい。
 アイコは果敢にもそれを追いかけた。
 が、一つ角を曲がった所でいきなりその不審人物に、胸倉を掴まれて襲われたらしい。
 恐怖に竦んだものの、ひったくりを追いかけるほどの勇気の持ち主。
 一瞬で事態のやばさに気が付くと、迷わず脚を蹴り上げた。
 蹴り上げた爪先は、見事男の股間に命中。
 怯んだ隙に、ほうほうの体で逃げてきたらしい。

「……もう、すっごく怖くて怖くて、必死で逃げてきたんですよう!!」
 事情を聞く間も、アイコは興奮したままでまくしたてていた。
 勝気な少女とは言え、いきなり不審人物に襲われればその恐怖はかなりのものだろうに。
 不審人物の特徴と言えば、黒い上下の中肉中背と言ったところくらい。
 親父臭かったと豪語するアイコの言から察するに、男ということになる。
「そう言えば、ちょっと前にユミさんも襲われかけたって言ってませんでしたっけ?」
 アイコの気持ちを落ち着かせるために、フレッシュジュースをグラスに入れて来た高岸が険しい表情の坂井と下村に言う。
「あぁ、そう言えば。あの時は警察に届けたんだっけ? 駆けつけてくれた人が呼んだとかで」
「あぁ。女の夜道の一人歩きになるからな。タクシー使ってる子はいいが、近くに住んでる子も何人かいるし」
「あの……」
 だいぶクールダウンしてくれたらしいアイコが、口を挟む。
「最近、多いみたいなんです。昨日も、ミイちゃんが変な人に後をつけられたみたいなコト言ってたし」
 煙草を銜えながら下村が、少し後ろに立つ坂井を振り返った。
 視線のやり取り。
「高岸、送ってやってくれ」
 突然、坂井が高岸にスカイラインのキーを放る。
 上手くそれをキャッチした高岸は、何かを任された嬉しさでほくほくしながら威勢のいい返事をした。
「なによぉ。高岸くん、なんでそんなに喜んでんのよ」
 憮然とした表情のアイコは、高岸のイマイチなエスコートに悪態をつきながら華やかな香水の匂いを撒き散らして去っていった。
 台風一過……そんな言葉が浮かんでしまい、下村はひっそりと苦笑した。
「一月にうちの店の女の子が三人、妙な男の被害にあってるってのは偶然だと思うか?」
 銜えただけの煙草に、坂井が火を差し出した。
「少なくとも、今まではそんなに頻繁にはなかったぜ。そりゃ、たまには妙な野郎にあったとかって言うのはあったけど」
 坂井も自分の煙草を銜えて火を点ける。
 偶然で片付けられなくもないが、片付けてしまうのもどうもひっかかる。
「とりあえず、明日にでもユミとミイに話を聞いてみるか。同じ人間のようならちょっと考えなきゃならんだろうし」
「そうだな」
 と、二人が算段を決めた時。
 裏口から、影のように藤木がふっと姿を見せた。
「藤木さん」
 闇の中からいきなり現われたような藤木に、若者二人は思わず驚く。
 気配をまったく感じなかったのだ。
 いつからいたのかさえわからない。
「事情聴取はお前らに任せるよ。俺が聞くよりは、上手く聞きだせる気がする」
 藤木は、許容の笑みを浮かべた。
「ただの変質者ならいいがな。違うようならすぐに報告しろ」
 些細なことかもしれないが、甘くは見ない。
 藤木の言葉に二人はしっかりと頷いた。


 翌日、被害に遭ったと言う女の子二人に話を聞いた。
 閉店直後、まだ女の子達が着替えをしている間に下村はカウンターに歩み寄った。
「これってさぁ、坂井。俺らだけじゃ人数不足ってんじゃねぇのか?」
 珍しく情けのない声で、下村がいつもより早いペースで片付けを続ける坂井に尋ねる。
「仕方ねぇだろ」
 三人の話を聞くと、現場こそばらばらだがどうやら犯人は同一人物。
 時間帯もまちまち。
 警察にでも届ければいいのだが、社長をはじめとする川中エンタープライズの幹部の素行が素行。
 あまり、警察には関わってもらいたくはない。
 そこでとった策とは、身内によるガード。
 タクシーを使わない女の子の帰宅経路を回ってみようと言うことになったのだ。
「まだ、厄介事になるとは決まったわけじゃないし。ただの変質者相手に藤木さんの手を煩わせる訳にはいかねぇだろう」
 濡れた手をハンドタオルでふいてから、坂井はカウンターを出た。
「俺、バイク使うからお前は車な。高岸っ」
 先程から、店の隅に手持ち無沙汰と言った風に佇んでいた高岸を呼べば、ハイハイと景気のいい返事をする。
「お前、徒歩な」
「……え?」
「だから、歩き」
「……俺、歩いてガードなんですか?」
「他に手、ねぇじゃねぇか」
 何を今更と坂井の顔に書いてあれば、これ以上の文句を繋げるわけもなく、高岸は景気悪く返事をした。


 数時間後。
 一時閉め切られていたブラディ・ドールに再び灯りがついた。
「昨日の今日じゃ、成果はないか」
 時間外労働の後の煙草を吸いながら下村が一言ぼやく。
「……確かに」
「明日もするんですか?」
 一番疲労の色を見せているのは高岸だった。
 しかも、彼は片頬に赤い手形をつけて帰ってきた。
 事情を聞けば、ガードしているはずの女の子に変質者と誤解されてこの様だと言う。
 女の子の間でも、さすがに噂になっているのだろう。
 こうなるのなら、最初から女の子達にも説明しておけばよかった。
 そこで、三人同時に溜息が漏れる。
「作戦練り直した方がいいんじゃないですか?」
「そうだよなぁ。叶さんあたりにでも頼めば一番手っ取り早いんだろうけど」
「深刻なのかそうでないのかもはっきりしないからな。動きにくいったらねぇな」
 一通り愚痴ると、再び溜息が漏れた。
 こうして、ブラディ・ドールの一夜は終わった。


 昨夜は無駄とも思える努力に甲斐あってか、妙な人物にあったと言う子はいなかったようだ。
 かと言って、今日も出ないとは限らない。
「さて……どうしようか」
「どうするかな」
「どうしましょうか」
 いたちごっこにもならないやり取りが繰り広げられるのは、レナのテーブル。
 鼻腔を擽るコーヒーの香りが思考を奪うと言い訳して、三人はそれぞれあらぬ方へ視線を投げてコーヒータイムを存分に味わっている。
 現実逃避と言う言葉は、各々辞書から消した。
 カウンターの向こうでは、菜摘がクスクスと笑いながらその様子を眺めている。
 ここに安見がいれば、昼間から暇なんですねとでも言われそうだが、この平日に時間は学校だ。
 いつまでもウダウダしていても仕方ない。
 何かきっかけがあれば……と他力本願な気分になったところで、
 カラン……
 と、涼しげにベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
 菜摘の柔らかな声が客を迎える。
「なんだ、この吹き溜まりは」
 開口一番でそんなことを言ってきたのは、叶だった。
「さっきから、ずっとこうなんですよ」
「客足に響くようだったら、俺が立ち退かせるが?」
「珍しい物が見れて、本当は楽しんでるんですけどね」
 楽しそうな会話を眺める三人は、深く溜息をついた。
「事情を実は知ってるんだがな」
 四人掛けのテーブルの一つ空いた席に割り込んで、叶がそっと告げた。
 ……ナンデスト?
 ぼーっとしていた三人の眼の焦点が、叶の不敵な笑みに絞られた。
「昨日、お前らが妙な動きしてたのも知ってる。ま、俺の稼業は情報が命ってとこがあるからな。ちなみに、川中も知ってるぞ」
 と言うことは、宇野も知っているだろうし、他数名の人間にも知られていると言うことだろう。
「ソースはどこからですか?」
「ミイって娘」
「女の子は不安でしょうね」
 さり気無く菜摘も会話に加わる。
 叶のコーヒーをテーブルに置く。
「早く解決してあげなきゃ、仕事にいきにくいでしょうに」
 それも大きな問題。
 何度目かの溜息をつこうと三人が、息を吸い込みかけた瞬間。
「俺にいい案がある」
 叶が言った。
 三人の呼吸が停止する。
「は?」
「だから、俺にいいアイデアがある。乗るか?」
 叶の唇の端が上がっている。
「そりゃぁ、その案を聞いてからですけどね」
 下村が用心深くそう返すと、信用ねぇなと叶は乗り出していた身を引いて笑った。
「お前にゃ、おいしい話になるはずだがな」
 意味深なセリフと器用なウィンクを下村に投げる。
 それで、下村にはピンときたらしい。
 薄い唇の一端がくっと持ち上がった。
 不敵。
「いいですよ。このままじゃらちがあかないですしね」
 まるで、悪人同士の取引現場のようだと、高岸は密かに思い、坂井はわけのわからない悪寒を背中に感じた。
「で、すまないが菜摘さんにも協力してもらってもいいかな?」
 紳士的な顔を一瞬で取り戻した叶の申し出に、菜摘は楽しそうな笑みを浮かべて、
「勿論。私にできることがあれば」
 快く承諾してくれた。

 かくして、ブラディ・ドールの従業員を狙った(と思われる)変質者の捜索会議は一時終了した。

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2001/02/22
こんな話書いてもいいのかと思いながらも、頭の中で膨れ上がっちゃったので、アップしました(周りを巻き込み腐れてイく)こいつら頭悪いんじゃないかと思われるのは、2への理由付けのためです。許せない人はこの辺で、サヨナラしておいてください(弱気です)
某サイト様で、女装坂井を見て以来、悶々と頭の中を巡っていたので、これですっきりしました。

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