※ 注意!!
この作品はBDの学園パラレルなお話しです。
バーテンとフロマネが幼馴染で退行してもらって高校生です。
こんなんでも許してくださる方のみ、ご覧下さい。
「ヤバイんですか?」
「あぁ、ヤバイな」
深刻な顔で会話しているのは、学年トップの成績を誇る秀才冷血生徒の下村と、白衣が野暮にならずに恐ろしいほど似合う化学教師の叶だった。
「化学と生物。この二科目がかなりやばい」
「叶先生」
「なんだ」
「嫌われてるんじゃ………」
化学は目の前の叶の担当科目。
その上、
「仮にも担任でしょう?」
そう。
叶は、今二人が話しあっている問題人物と下村の担任でもあるのだ。
「うるさいぞ」
化学準備室は叶の城。
呼び出した下村はキャスター付きの事務椅子に座らせて、自分は来客用と称して仮眠用になっているソファーに踏ん反り返っている。
口には高そうな煙草を銜えている。
「で、これ以上の単位を落すと駄目だな」
「駄目ですか」
出されたコーヒーは、実験用の漏斗やビーカーやアルコールランプでいれられるモノだがこれがかなり絶品なのだ。
その香りを楽しみながら、下村は溜息をつく。
「そのニ科目を八十点以上とらないと、アウトだ」
「八十点ですか………」
厳しい。
出席点・提出点がないのだから仕方がない。
苦い顔をした下村を、叶も真剣に見詰めてくる。
「学園長がアイツを気に入ってる。できれば落したくないんだが……やってくれないか?」
「……八十点以上ですか………」
「そうだ。お前ならできると思うんだ」
「センセイ」
「なんだ?」
「ソレ、宇野先生と賭けてますね」
…………………………………………………………………………………。
たっぷりの沈黙の後、ふーと煙を吐き出して叶はソファーに沈没した。
その態度が図星だと語っている。
問題生徒が叶の教科を落しそうな上、その生徒の担任。
おそらくは、あの堅物社会科教師に散々馬鹿にされたに違いない。
それで、普段はクールなこの男もムキになったのだろう。
大方、
『じゃあ、アイツが今度のテストで俺の科目をクリアしたら、言うこと何でも聞けよ』
あたりだろう。
叶は宇野との噂もある。
じとっとした下村の視線に、叶はすっ呆けてみせる。
「とにかく、このままじゃアイツは留年しちまう。お前もイヤだろう?」
ソレは確かに。
一緒にいる時間が減るのはイヤだ。
なんにせよ、幼馴染で親友で、最近めでたく恋人にまでなれた坂井直司の留年を賭けたテストは目前に迫っている。
化学準備室を退室した下村は、大きな溜息をついて、隣接する生物室を見た。
ここの主にも呼び出されているが、できることなら三年間踏み入れたくはない部屋だった。
人類未踏の地とされる生物準備室。
うっかり踏み入れた者は人体実験の末、人格を変えられたと言う噂がある。
生きて帰れるだろうかと、入室を逡巡していると、ガラリと扉が開いた。
こちらも白衣を見事に着こなす生物教師。
どこか崩れたような感じがするが、そこがいいと言う女子生徒の声も多数。
ばらばらと乱れている髪は長めで、乱暴に括られている。
いつもしている眼鏡は、今は胸のポケットに引っ掛かっている。
この男からは、いつも女物の香水の匂いがする。
暫し無言で視線を交わしているうちに、カツンとヒールの音が中から響いてきた。
こちらも白衣の山根保健医だった。
物憂げに髪をかきあげて、首筋を少しさする。
「じゃあ、桜内せんせい。お先に失礼します」
大人の女の色気を撒き散らして、桜内と下村の横を通り過ぎていく。
香る香水の匂いが、生物教師の纏う体臭の原型かと、下村はカツカツと鳴るヒールの足音と白衣の背中を見送った。
「……入るか?」
たっぷりの沈黙の後に桜内は準備室内を示すが、先程の状況を考えると決して人類未踏ではないことはわかった。
が、別の意味で立ち入れなくなる。
「教室の方で結構ですよ」
結局、話し合いは誰もいない教室の一角でとなった。
勿論、内容は坂井のことで。
「坂井が合格ラインの点数とるまで俺はお預けなんだよ」
と、叶よりはずっとストレートな物言いをしてきた。
何が、とは聞かなくてもわかる。
女だ。
「なんか、そうやって勝手に賭けてるみたいですけどね、俺じゃなくて本人にも言ってくださいよ」
「言っても聞くかよ。あのガキが。いいか、頼んだぞ。俺の性生活はお前にかかってるんだ」
んなもん、生徒にかけるな。
胸内でのみ毒づいて、下村は生物室も退室した。
これでやっと帰途につける。
大きく肩を落すと下村は夕暮れ時の校舎を出た。
帰ると、坂井がいた。
ベッドの上に転がって、置きっぱなしの車雑誌を捲っている。
「おかえり」
下村の姿を視界にちらりと入れると、また雑誌に集中し始める。
「………ただいま」
例え恋人同士になったからと言って甘くはない。
そんなところが可愛いのだが。
「おい、坂井」
「んー?」
上の空の返事が返ってくる。
それも予想済みだ。
ベッドの端に腰掛けて、坂井の背中に圧し掛かった。
「うわっ。なんだよ、重てぇなあ!」
さすがにこうなっては無視できないのだろう。
体を捩って、抗議の声を上げる。
「お前のことで呼び出されて遅くなったんだぜ?」
「はぁ? なんで?」
坂井には危機感はないのだろう。
最近、悪さはしてないぞと考え込んでいる。
「成績のことだよ」
「せーせき? なんでお前が呼び出されるんだよ?」
「そりゃ、お前がつかまらないのと、言っても聞かないだからだろう」
「で、何だって?」
「化学・生物の二科目を80点以上取らないと留年決定だとさ」
見下ろしたままの坂井の顔が顰められる。
「……他の科目は?」
さすがに不安の影が。
「それなりに頑張らないとちょっとヤバイかな」
ますます不安の色。
「叶先生と桜内先生に呼び出されて、勉強見てやれって命令だ。それぞれ、先生方にも諸事情があって、お前にはどーしても80点以上とってもらわないと困るんだとよ」
その困る教師の顔を思い浮かべたのか、坂井は心なしか青ざめる。
その表情も可愛くて、下村はついつい布団の上に流れている髪の毛を梳いてみる。
「どーする?」
困惑しているせいか、坂井は下村の手を跳ね除けたりしない。
「何が?」
「お勉強、するんでしょうか?」
退学しても坂井ならやっていけるだろうし、学校がそんなに好きで通っていると言う雰囲気ではない。
辞めると言うなら、教えても仕方がない。
答えを促せば、坂井は開きかけた口を閉じた。
その頬が密かに赤い。
恥ずかしそうに視線を外す仕草はやはり可愛い。
思わずキスしたくなる衝動をここでは堪えて、下村は言えよと促す。
「する」
「は?」
「だから、勉強して、80点以上取ればいいんだろうっ?」
「どうした? やる気だな」
「……お前が言ったんだろうっ。そのっ、学校にいれば一緒にいる時間が長くなるからって」
そんなことを言っただろうかと下村は記憶を辿る。
言ったかもしれない。
いつも屋上でさぼっている坂井を諭す時に、そんなことを言ったかもしれない。
「そーだよなぁ。いいぜ、俺が手取り足取り腰取りで教えてやる!」
「なんだよっ。最後のはっ」
がばりと抱きついてきた下村に抗議しようとするが、それもままならずに坂井の体はベッドに沈んだ。
「家庭教師代はお前で手を打ってやる」
「まだ、何も教えてもらってねぇよっ」
「前払い♪」
近寄り難い教師二人に呼び出されて、あまり精神衛生上よろしいとは言えない時間を費やされたのだ。
これくらいはしてもらわなければならないだろう。
シャツの下から手を差し入れて脇腹を撫で上げると、坂井が息を飲んだ。
抵抗が遅れた隙に下村は、坂井の手首を封じて噛み締めている歯列を割るように、唇に舌を這わす。
「やめっ……」
そう声を上げたところで、より深く口付ける。
その間にも、坂井の体を弄る手を休めない。
吐息が熱くなるころには、坂井の抵抗もなくなっていた。
テスト勉強は明日から。
二人の脳裏にかすめた問題事は、そんな一言で後回しにされた。
2001/03/20
こんなんでよいのかなと思いながら、BD学園モノその2です。先生方、ギャンブルしてそうで。なんとなく。