※2005年感謝企画「繋ぐためのポジション」のオマケのオマケです
おつかれさまでしたと、撮影陣からにこやかな声を掛けられた。
この恥ずかしい仕事も気が付けば終わっていて、こうしてみるとなかなかに楽しかったのかもしれないと、 スタッフの存在など途中から忘れてしまっていた二人は振り返ったりもしていた。
「これ、広報の山沖さんからです」
ディレクターらしき男性が、二人に一通の封筒を差し出してきた。
白い封筒を開けると、中にはおつかれさまと言うメモとチケットが入っていた。
スタジアム近辺にあるホテルの宿泊券だった。
しかもこれは、スイートルームのものらしい。
二人を上手く言いくるめて今回のテレビ出演へと誘導した山沖女史の笑顔が浮かぶ。
どこかで手に入れたのかは知らないが、飴と鞭の使い方をよく知っている。
「うわぁ、めっちゃベタ!」
高層階にあるスイートルームは、関西圏でもランクが高い。
その部屋に対して英介のコメントがそれでは、撮影を頑張ったご褒美にとサプライズを用意した山沖女史もがっくりだろう。
目の前に広がる夜景に、綺麗ねとうっとりするよりも先に笑い飛ばして見せた。
「ドラマとか映画でしか見たことねぇよ、こんなん」
広く豪華でハイセンスの部屋を見渡しながら、英介はコンビニで何か買ってくれば良かったと呟いた。
空腹なのはわかるが、あんまりな発言だ。
どれだけ稼いでも、生活水準を少しも上げようとしない彼らしい。
ファミレスが好きで、コンビニデザートが好きな庶民派Jリーガーは、この魅力的なシチュエーションに流されたりはしないようだ。
そうやって呆れてみせる高山も、こんな広々とした部屋よりはこじんまりとしたビジネスホテルの方が安心できる性質ではある。
「これ、思うんだけど」
あまりに豪華な部屋、シャンパンとフルーツのサービス。
「山沖さん、夏に結婚しただろ」
「したな」
「式挙げたの、このホテルだろ」
「だったな」
「ココ、新婚夫婦に宿泊券プレゼントするんだよ」
「……」
「山沖さん、あの後、急遽のファン感入れたりして忙しそうにしてたんだよな」
「……じゃあ、その、おこぼれ?」
カラカラした笑顔で押しの強い山沖女史だ。
多忙だという理由もあっただろうが、新婚ホヤホヤの旦那を説き伏せ、ホテルの宿泊券を選手の懐柔策に使うつもりでいたのだろう。
抜け目ない。
抜け目ないが、地域の人たちにチームを愛してもらおうと骨身を削るように仕事をする彼女のことはどうやったって許してしまうのだ。
同性同士と言う英介と高山の恋愛が謂われない非難を浴びることがないように、ただ愛し合っているだけなのだと、それを知ってもらうための広報を手がけてくれたのも彼女だ。
感謝しなければならないところだ。
「山沖さんに、何かお返しするか」
英介が苦笑しながら、そんな提案をする。
何をと問えば、
「そりゃ、やっぱりホテルの宿泊券だろー。あと、山沖さんの誕生年にできたワインとか?」
「真っ赤な薔薇の花束もつけないとな」
「お前もベタだね、考えること」
言いながら英介がシャンパンのコルクを抜く。
折れそうな足のグラスにどぼどぼと注いで、自分の喉を潤しながらもう一つのグラスを高山に差し出してきた。
「英介が飲むとシャンパンもポカリに見えてくる」
山沖女史にお返しをするのなら、何より自分達がもう少しプロとして夢のある生活をしてみせることではないかと高山は思い直す。
「ワインは398円まで!」
「……シャンパンですから。それに398円は最低ラインだ」
呆れながら自分もグラスを傾けるが、上等なものであるかどうかはわからない。
人のことは言えないなと、広く豪華な部屋を持て余す。
非日常空間ではしゃいでいた気持ちも落ち着いてきたのか、英介はグラス片手に神戸の夜景が見渡せる窓辺に張り付いた。
「すげぇー」
キラキラ瞬くような夜景は何度見ても絶景だ。
「スタジアム、あの辺?」
「スタジアムは逆方向」
あれ? と首を傾げる仕草に苦笑して、高山は空になったグラスに少しだけシャンパンを注ぎ足す。
味のほどはわからないが、飲みやすいということは体が証明するらしい。
ジュースのような味のアルコールしか飲まない英介が、このシャンパンはくいっと喉に流し込んでいる。
「山沖さんに、ちょっと感謝」
ぽつりとグラスの中に囁くような声を、高山の耳は聞き取った。
視線をやると、ちらりと上目遣いで見返してきた。
「今日の分の放送見て、世の中の女の子の何分の一かでもいいから、タカのことを諦めるかもしれないから」
語尾はもぞもぞと消えていき、英介はすっかり俯いてしまった。
夜景を見せる大きな窓は、英介の旋毛あたりしか映してくれない。
見下ろす項だとか二の腕だとかが、急に切ないほど愛しく感じた。
恥ずかしすぎて呻いた英介の手からグラスを取り上げる。
片手で英介の頬を撫でると、ふっと息をついて手の平に擦り寄ってきた。
高山が背を曲げて額を合わせると、至近距離で心もとないような上目遣いで視線を向けられた。
高山を慕う多少マニアックな女の子達の倍以上のファンがいるくせに、自分のことは棚にあげて下降思考に陥っている。
いつも強気のくせに、なんでこんなところで沈んでしまうのか。
考えると可笑しくなると同時に、愛しさが沸き起こる。
「不安?」
問えば、こくりと子どものように頷く。
「じゃあ、確かめとくか?」
「……なに?」
「俺がお前以外の人間を欲しがらないって」
言葉でも態度でも、とにかく相手の気持ちを確かめたいと思っている。
何度確認したって足りない。
「お前っ、大勢いる時にはへタレのくせに、俺といる時はちょっと強気に出すぎじゃねぇのっ?」
「ドキドキするだろ」
「しねぇよ!」
そうは言いつつも、抱き寄せた英介の胸からは鼓動の早さが伝わってくる。
「で、する? しない?」
頬を赤く染めながら、ぎりりと睨みつけてくる英介にそう囁けば、
「……するのは、する。けど、先に風呂!」
ぶっきらぼうな答えが返ってきた。
「あーもー、なんか、逆に安っぽいわ」
ぶくぶくと泡立ったバスタブを見て英介はうろんな目つき。
アメニティの中にあった入浴剤を適当に選んで入れてみたら、洋画で見るようなバブルバスが完成してしまったのだ。
「安っぽい方が好きだろ」
ザバンと派手な水音をたてて、高山は裸にむいた英介の体ごとバスタブに沈む。
洗ったばかりの髪の毛をかきあげながら、英介は諦めたように溜め息を一つついた。
「安っぽいのが好きなんじゃないの。生活感溢れるのが好きなの」
強引で我侭な子どものような高山の一面を向けられるのが自分だけであるという優越に緩んでしまいそうになる口元を引き締めながら、背中に感じる胸板を背もたれにもたれる。
背後から伸びてきた高山の手は、ゆるゆると英介の肩を摩り、腕を辿る。
「寝るなよ」
「んー」
浮力で軽い体を腕一本で、高山の右ひざに抱え上げられる。
「寝ない、よ。眠れないだろ、この状態じゃ」
首筋に口唇を押し当てていると、英介がそんなことをぼやく。
思わず表情をうかがうと、英介の大きな瞳にもはっきりと、このままではおさまりそうもない熱がこもっていた。
高山の手が張りのある腿を辿り足の付け根までをゆったりと撫でると、英介は体を震わせる。
泡まみれの水面が視界を遮るせいか、高山の手の動きはどれも意図せず英介を竦ませた。
触れる度にふっと詰める息がだんだんと甘味を帯びてきて、もどかしげな指先が腰を抱く高山の右手を掴んだ。
いつもベッドの上で何かに縋るように服やシーツを握り締めるのに、今はそれがないせいだろうか、英介の指先はもどかしそうでそれがいっそ愛しく思えた。
どうにかしてやりたいと思うのではなく、もっと戸惑ってもがく姿を見たいと。
耳朶を噛んで引っ張ったり胸の突起を掠めるような触れ方をしたり、些細な悪戯を執拗に繰り返す。
「んぁ……っ」
抑えようとした声が溢れ出て広い浴室に響く。
慌てて口を押さえたが、一度溢れた喘ぎはもう噛み殺すことができない。
高山の手は曖昧な刺激を続け、英介に切ない喘ぎ声を紡がせる。
いつもより敏感だと思うのは、風呂場と言う場所のせいか泡風呂の効果か。
ふわふわと湯船に漂う体を言いように撫で回していると、縋るものを求めた英介の手が高山の首に巻き付こうとする。
「待って」
それを制して、くるりとお湯の中で反転させた体を自分の足の間にやってすっぽりと抱きしめる。
支えられていなければズルズルと湯船の中に沈んでいきそうになる英介の体は高山が片腕で繋ぎとめ、もう片方の手で今度は明確な愛撫を与えてきた。
足の間の昂ぶり始めたものを扱かれ、英介の背中が反り返る。
動くたびにパシャリと水音がするのも、何か別のものを連想させて気持ちを高揚させた。
英介の手はやはり何か縋るものを探し続けていて、一度は高山の手を握ったがすぐに離れて硬い浴槽の縁を掴んだ。
高山の手に縋らなかったのは、以前に抱き合った時に高山の背中にひどい引っかき傷を残して、それを代表召集の際に揶揄されたのを思い出したのだろうか。
陰険な揶揄ではなかったが、熱いねぇなどと笑われた英介がいつものようにカラリとした言葉を発して笑って流してしまうことができず、硬い笑みだけを残してさっさとその場を後にしてしまった。
笑った選手達は悪かったとこっそり高山に謝罪してきたのだが、英介の中では重い出来事だったのかもしれない。
カリっと硬い浴槽に爪をたてようとする手を両方掴んで、自分の手に絡めるようにして引き寄せる。
「触って」
耳に直接吹き込むように囁くと、小さく首を横に振られた。
「お前のもんだよ。へし折られるんじゃないんだったら、何したっていい」
引っかいても噛み付いてもいいよと続ければ、しゃくりあげるような呼吸を一つして英介は高山の左の手を抱きしめるように握りこんだ。
英介のものだ。
この堅強な体の全ては。
彼が傍にいなければ、自分はプロスポーツ選手としてやってこれなかっただろう。
プレッシャーに潰れ、音もたてずに消えていっただろう。
英介が傍にいて、太陽のように笑い、取材陣の前で高山の肩を抱きベストコンビですと豪語してくれて、落ち込めばぐずぐずしてないでさっさと立てと蹴り上げて。
何よりピッチの上では、サッカーの楽しさを味あわせてくれる。
英介が傍にいるから、自分は今こんなにも幸せなのだ。
今の自分の存在は、英介のものだ。
胸に抱きこまれた腕から、英介の左胸の鼓動が伝わってくる。
必死で理性を保とうとして震える体の項の部分が綺麗な朱色に染まっていて、なんとなく、美味そうだなと思うまま噛み付いてみた。
びくりと反応した英介は、反撃の如く高山の指に噛み付いた。
痛みを感じるほどではない、甘噛みのようなそれについ苦笑がこぼれる。
自由な手で英介の足の付け根の奥を探れば、指に硬い歯が食い込む。
「何してもいいって言ったけど、声は聞かせて」
英介の口の中から指を引き抜き口唇の表面を辿ると、ふっと不規則な呼吸が指先を擽る。
反対の指先は英介の体の内側を探ってその熱を知る。
英介の唾液で濡れた指で揉むように下口唇を撫でると、英介の体から力が抜けていく。
「は……んっ、た……か」
「ん?」
「おま……、むかつく……」
甘ったるい声で罵声を紡いで、でも英介は高山の腕の中に堕ちている。
何度か感じる場所に触れたのか、英介の足が水を蹴った。
後ろからの行為を英介はあまり好きではないと口で言うけれど、高山は黄金の右足の脅威を気にせずにリードをとれて好んでいる。
好きにしていいと囁いておいて、結局は高山の方が好きにしている。
英介も大概勝手な人間だが、自分も人のことは言えないらしい。
「ふ、ぅ……、んんっ……、もうっ、や、手ぇ、やめろよっ」
ふにふにと柔らかい口唇を弄っている手を、力の入らない英介の手がどけようとする。
「相変わらず弱いな、ここ」
「んーっ」
逃れようと顎を反らそうとするのを、口の中に指を突っ込んで奥歯と顎とを押さえつける。
犬の噛み癖治してるんじゃねぇんだぞと、不明瞭な声で抗議されたが笑って流しておいた。
似たようなものだ。
口を閉じられない状態にして、体の奥に忍ばせた指を増やす。
「ふっ、あっ、やだ! お湯っ、入ってくる! 人の体に何すんだ、ばか!」
「あーもー、もっとすごいこと今までもしてるから、大丈夫だろ」
嬌声を引き出したいと口唇を開けさせれば、セット売りの罵声も飛び出してくる。
セックスの最中に笑えるなんて知らなかった。
「余裕こいて笑って、あぁっ、や、そこ……っ、ぁんん」
探り当てた弱い箇所を容赦なしに刺激すると、体をくねらせ甘い声を上げる。
後ろから抱き締めていると、小さいなとしみじみ思う。
商売道具の足だけは見ればサッカー選手のそれとわかるが、首も肩幅も腕も胴回りも、アスリートとしては頼りないほど細すぎる。
力勝負なら負けないのに、どうやったってサッカー選手としての評価は英介の方が上だ。
おそらくは複雑なコンプレックスも混ぜ込んだ劣情も、英介の肌に触れればじわりと沸き起こるような愛しさに変わる気がする。
たぶん英介は、自分の腕に抱かれている時に劣等感を抱き、ピッチの上では知らず優越を抱えて自分の前を突っ切っていくのだろうから。
「ふっ、あ……ぁ、ふぁっ」
口の中をかき混ぜる指が唾液を嚥下するのを妨げて、溢れたそれが顎を伝った。
恥ずかしいからと口腔を犯す指を引き抜こうとするが、英介の手には力が入らない。
もどかしいのか強引に体を捩った拍子に、英介の腰に高山の昂ぶりが触れた。
「ぅあっ」
英介も自分が何と接触したのか察して、声を上げびくりと固まった。
そろそろと振り返り、窺うような目を向けてくる。
「わかる?」
「……っ、な、なんでっ」
「お前の声」
お前の声がこうしたんだと囁けば、ただでさえ潤んでいた英介の大きな目が更にじわりと潤んだ。
口に含んだままの高山の指に、柔らかな舌がそろりと触れた。
ちゅっと吸い上げるように口の中が動いて、連想されるいやらしい想像に高山は奥歯を噛み締めた。
硬くなっていた体から、英介がゆるゆると力を抜き高山に全てを預ける。
『タカは俺が意外と深くタカのことを愛しちゃってるってのを、知っといてね』
高山が仕掛ける愛撫の手に、ついつい嫌がる素振りや反抗はしてしまうけれど、それは条件反射のようなものだから、真意を見抜いてと彼は言う。
乱暴な腕を優しく受け止めてくれたら、あとはもうアナタの腕に落ちるだけだと。
背後からの体勢のまま膝裏に手を入れて脚を開かせると、英介が意識して呼吸を整えようとする。
硬く閉ざされた秘所の抵抗を押しのけるようにして体を繋げると、英介が細い悲鳴を上げた。
慣らしはしたが、湯船の中の行為はいつもと違った感覚をもたらすのだろう。
不安を拭ってやることもできずただ自分の欲望を飲み込ませて抱きしめると、戸惑ったように英介はゆるく頭を振る。
「やぁっ……、も、それ以上、だめっ」
「もう……、全部入った。苦しいか?」
心配して尋ねれば、そうじゃないと頼りない声が応えた。
頭を反らして高山の首筋に頬を摺り寄せてくる。
「……タカ、の、深いとこにある」
感じたままを口にするのは、何が恥ずかしい言葉で何が相手を煽るのか、未だ学習中の英介らしい言動だけど、
「あ、あっ、やぁ……っ、そんな大きくしたら、もぅ……、おかしくなるっ」
聞かされる方はたまらない。
英介の体が落ち着くまで待とうと思っていたのだが、そんな些細な決め事も貫かせてくれない。
軽く揺するように突き上げると、目の前の背中が反る。
浮力で体は軽いが、水の抵抗のせいかシーツの上ほど自由には動けない。
「ふぁ……んっ、あーっ。ふ、や、ゆっくり、なの、いやっあ」
ゆっくりと体が離れるギリギリまで引き抜き、またゆっくりと深く繋がる。
まるで高山を味あわせるような執拗な抽挿が生み出す快感は、英介の喉を震わせ甘い声を上げさせる。
「あぅ……っ、やぁっ、あっ、いやっ」
「なにがいや?」
「……ふ、ぅ……ん、タカの、形とか大きいの、わかるの、や……だ」
細い顎を掴んで仰向かせ、濡れた双眸を覗き込んで問えばいつになく素直な答えが返ってきて、下半身に響いた。
それに英介も反応して切なそうに息をつく。
ついさっきまで芝生の上にいた人物とは別人のようなあどけなく、淫らな表情に煽られて調子にのって、嫌だと言われたやり方で英介を追い詰める。
感じて体を震わせる英介の内部は、拒否の言葉を続ける口唇とは全く反対の動きを見せて高山に絡みつき、追い上げる。
目の前で赤く染まった項や耳朶に口付け、時折噛み付くとその度に体の中が反応する。
「んーっ! あぁっ、あっ、タカっ、もうやだ。も、無理っ」
「いく?」
水面に漂う泡を蹴散らして身を捩った英介が、まるで懇願するように高山を見上げた。
後ろ抱きにした無理な体勢で顎を上げさせキスをして、舌を絡ませると同時にギリギリまで引き抜いたものを強く打ち込む。
「ふ、んーっ! ――っ」
上がる悲鳴を食い尽くすように、口付けを深くする。
びくびくと腕の中で激しく英介が痙攣して達すると同時に、高山は弛緩する体から楔を引き抜き絶頂を迎える。
感じ入った高山の呻き声は英介が飲み込んで、深く長いキスを解いた時にはまるで全力疾走をした後のように息が上がっていて、苦しいのにひどく心地が良かった。
腕の中で英介がとろりと溶けた声で名を呼ぶ。
応えようと息を整えている間に、英介の体が完全に脱力した。
世界一と賞賛されるミッドフィルダーの見事なフェイント、前へと再び進んだ彼の足元にはボールはなく、しかし相手ディフェンダーは彼に誘われて前へ一歩踏み出したところだった。
背後から置いていかれたボールをさらったフォワードが、密集する選手達の足元を貫くようなシュートを放つ。
ボールはゴールネットを揺らし、熱狂的なサポーター達がスタジアムを揺らしている。
「今の、狙ったのかな」
溜め息が出るようなプレーに見蕩れていると、シーツの中から声がした。
「狙ってるんじゃねぇの?」
「じゃあ、連携?」
「だろ」
「打ち合わせすりゃできんのかな、あんなプレー」
風呂で意識を失った英介だが、のぼせたわけではなさそうだ。
身軽に起き上がると、ミネラルウォーターを取り出してきて半分ほど飲み干した。
ベッドに腰掛けていた高山の隣に来て腰を下ろし、
「あーゆーのやろうぜ、今度。フェイントは俺がやるよ。タカは後ろからきて、ミドルの役な」
スロー再生されるプレーを見て言う。
「簡単に言うなよ」
あしらいながら英介の額に手をやると、火照りも引いたようだった。
「平気か?」
「ん、ちょっと、だるいけど」
ちょいちょいと親指の腹で目蓋を擦ると、猫のように目を閉じる。
ふっと零れ落ちた吐息は思いのほか色っぽく、さっきぶつけたばかりの欲情が再び芽を出し始める。
「もっと」
「ん?」
「さわって」
あどけないほどストレートな言葉に、みっともなく喉が鳴った。
「今日はタカに独り占めしてもらう日にした」
いつも強く射抜いてくる双眸が、今日は恥らうような眼差しを向けてくる。
絶対的な信頼も甘やかな欲も、そのどちらをも向けてくれるのだと思うと、たまらなく嬉しい。
嬉しいと思うままに寄り添ってくる体を抱きしめた。
それでも『今日は』と限定された独占権を多少苦くも思いつつ、狭量な自分を追い払ってもらうためにキスを求めた。
動物のようにペロリと舌を出して高山の口唇を舐め、ぶつけるような下手くそなキスをくれた。
それから、
「だいすき」
楽しそう笑いながら、囁くような小声で告げられる。
じわっと体温が上がるような喜びと、何故だか切ないような気持ちがこみ上げて、もう一度言って欲しくて、
「ん?」
聞こえないふりをしてベッドへ押し倒せば、調子に乗るなと顎に噛み付かれた。
「俺のこと扱えるのはタカだけだよ」
扱いにくい肉体と魂を理解して受け入れて、どちらも抱きしめてくれるのはタカだけだよと囁かれ、こうして絆されていくんだろうなと笑いがこぼれた。
「こんなわかりにくい男の相手が出来るのも、英介だけだよ」
タカのマニアックなところがうつったのだと、可愛げのない言葉にももう慣れたし、そういう容赦のないやり取りはいかにも自分達らしい睦言のようにも思える。
ただ、
「わ、今の見た? スライディングのボレー。あれはとれねぇよなー」
つけっぱなしのテレビに映ったスーパープレーの方に見蕩れるのはいただけない。
すかさずテレビを消して、邪気のない口唇を塞いで言ってやる。
「今日は俺だけのもんなんだろ。だったら、サッカーにだって渡すもんか」
与えられたばかりの独占権を主張すれば、仕方ねぇなぁと笑ってくれる。
合わせた甘い口唇も自分のものだと、二人の体の境界を曖昧なものにすべく高山は奔放な体を繋ぎとめる。
この腕になら、英介は縛られてくれるのだ。
それでも、無防備に晒された首筋に顔を埋めながら幸福に半分浸りつつも、脳内では先ほどあんなプレーがしたいと英介が求めたフェイントを再生させるのだった。
END
2005/12/02
感謝企画のオマケのオマケはやっぱエロでしょ!と思って、エロです(笑)
デートで皆様の案によりラブラブになった二人なので、ここは一泊せねばと泊めてみました。
05オールスターの開催地をホームチームが紹介する冊子で、若手が24時間のファミレスを上げていたのが微笑ましかったので、テーマは貧乏性。あとお風呂エッチ。
タカも英介も何にもないビジネスホテルにコンビニの買い物とか、自分のポータブルDVDとか持ち込んで、どんどん自分の空間にしていくのが好きなタイプ。高級すぎてくると「ありえねー」ってウケるといい。ナイフやフォークが二本以上出てくると手が震える。サブタイトルは「ワインは398円まで!」